板橋の内野邸で「持続音と光のインスタレーション」を開催する 秋澤湖(ひろし)さん 市内鴨宮在住 34歳
流れのままにつくる流れ
〇…職業は木工家ならぬ「竹工(ちっこう)家」。朝早くから山に入って竹を切り、工房でさまざまに細工する。筒状の形態を活かした皿や青竹のベッドなど、頭の中のアイディアを、手技を駆使して竹に伝える。哲学者のような風貌に、足元の地下足袋姿がミスマッチで面白い。
〇…呪文のような名の楽器「ディジュリドゥ」。オーストラリアの先住民が作ったこの楽器に出会ったのは「旅先のインド、ではなく、インドから帰ってきた日本」とはにかむ。友人が演奏する様に魅かれ、手作りを思い立った10年前、竹工家への第一歩を踏みだした。酒匂の海に流れ着いた竹で第一号の作品が完成した頃、県の進める竹林再生事業を知る。景観保護と里山再生の仕組みを実践で学んだ3年間で、いよいよ創作活動に火が付いた。夜空に浮かぶ竹灯篭や新宿のデパートを飾ったオブジェなど、作品は多くの人の目に触れている。
〇…人が苦手な「いじめられっ子」だったが、相手の懐に飛び込み、賢く苦境を乗り切った少年時代。中学校では「帰宅部的」卓球部。山北高校時代の釣り部では「びっくりするくらい釣れなくて」アルバイトに精を出した。楽譜のある音楽よりも自由に音を奏でることを好む様子は、「たゆたう」という言葉が似合う。ディジュリドゥの練習は「海を望む羽根尾公園がお気に入り」の自然派だ。
〇…「竹は樹木でなく、草」だそう。真竹は120年に1度、孟宗竹は67年に1度花を咲かせるなど、口を開けば”竹トリビア”が続々と飛び出す。さまざまな文献を読み漁り、造詣を深める。ある時は竹を求めて「竹林ハンター」に、またある時は作った楽器を売る「営業マン」にもなる。
〇…イベントでは、天井から吊るす竹のオブジェが光を放つ予定だ。自らディジュリドゥの生演奏も行う。「見たことのない竹のカタチを提案したい」。放っておけば荒れる一方の竹林に射し込む、一筋の光となるか。
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