講道館柔道七段に昇段した 池谷 昭吾さん 南足柄市在住 80歳
足柄の柔道と共に70年
○…湘南地区柔道協会、足柄上柔道協会、南足柄柔道育成会、吉田島農林高校(当時)などでの指導の実績、歴戦の試合成績、地域の柔道発展への功績など、柔道への貢献が認められ、講道館柔道七段に昇格を果たした。「戦時中に柔道を始めて70年あまり、長年柔道に携わってきてこのような栄誉をいただけたことは素直に嬉しい」と昇段の喜びを満面の笑みで表した。
○…静岡県小山町に生まれ育ち、戦時中、旧制中学校に通っている時に柔道に出会う。「当時は戦時中ということもあり、柔道か剣道が必修だった。自分の場合は体が小さかったから柔道にした」。その後、中央大学で厳しい稽古を積み、公共職業安定所に就職した後も松田警察署の道場などで柔道に携わり続けた。
○…「当時はそれぞれの村で、青年団が町道場のような形で稽古をしていて、まとまった組織というものはなかった」。昭和27年、松田署などで稽古をしていた先輩達と共に足柄上郡柔道協会を発足させ、昭和45年に足柄上合同庁舎に青少年会館が建てられ、武道場ができたことから、子どもたち向けの柔道教室を開くようになった。
○…子どもの頃から歴史に深い興味を持ち、江戸時代末期の維新志士が特に好き。時間を見つけては当時を生きた人達の息遣いを感じに、京都まで足を伸ばして旧跡などを回る小旅行をする。「歴史だけは好きで子どもの頃からそういった本をたくさん読んだ。数学や絵は本当に苦手だったけどね」。
○…今までに何百人もの教え子を指導してきた。それだけに最近の風潮に警鐘を鳴らす。「武道である柔道で強さを求めることは大事なこと。しかし、それ以上に心身の鍛錬、丈夫な身体作り、相手を敬い、思いやる心を養うことのほうがもっと大切。若い選手達には日本に伝わる”正しい柔道”を覚えてほしい」。温和な表情の中に武道家の凛とした姿が見えた。