第55回東日本伝統工芸展で三越伊勢丹賞を受賞した 大高美由紀さん 南足柄市福泉在住
着物の魅力伝えたい
○…伝統工芸の保存などを目的に東京都教育委員会などが主催する「第55回東日本伝統工芸展」で入賞の栄誉を浴した。関東以北の作家から、陶芸や染織、漆芸、金工など7分野に約500点の作品が出品され、染織部門で最優秀となる三越伊勢丹賞を受賞した。今年で4回目の受賞だが、「『さらに努力を続けなさい』と言われている気がする」と謙虚な姿勢を崩さない。出品したのは紬織(つむぎおり)絣(かすり)着物、題名は『垂水(たるみ)』とした。水流を表現した濃淡のある藍の風合いが「清々しくも力強い世界を表現している」と評価された。
○…「自分でも作ってみたい」と着物について調べ始めた。着物づくりの基本となる機織りが職業訓練校でも学べると知った。”十日町紬”で有名な新潟県十日町でその技術が学べることが分かると十日町へ引っ越し、学校へ通った。機織りを学ぶなかで、著名な作家が南足柄に工房を構えていることを知ると、弟子入りを直談判した。「効率重視ではなく表現したいものを追求する」そんな考え方を師匠から学んだという。
○…横浜市で生まれ育ち、20代の頃からの趣味は山歩き。県内の山を中心に北アルプス、南アルプスにも登った。回数こそ減ったが、山を通じて知り合った仲間との親交は続いている。「季節を感じられるものが好き。インスピレーションにもつながる」と、制作に打ち込む合間に県西地域を中心にあちこちと足を運び、自然からの恩恵を受けている。
○…着物の魅力を「形を変えながらもずっと日本で伝わってきているもの。文化や風習など、模様一つをとっても祈りや願いなど、人の心に繋がるいろいろな要素が詰まっている」と語る。若者の間で着物を楽しむ文化が広まりつつあることが嬉しい、とも。これからも作品づくりのテーマに据える「日本の四季の魅力を伝える」ことを追求し続け、思いを込めた作品を紡ぎ出す。