渡辺元智監督=松田町出身=の勇退で注目が集まる横浜、ドラフト候補の二枚看板を擁する東海大相模、県立勢64年ぶりの選手権制覇を狙う県相模原など、今年の高校野球も話題が尽きない。球児が汗と涙を流す夏のグラウンドに合同チームで臨む野球部がある。
昨年秋は部員不足で大会に出場できず、この春は3校合同チームで地区予選に臨むも大敗の連続。夏の勝利から遠ざかって久しい。
県立大井高校硬式野球部の現在の部員は7人だが、3月までわずか3人だった。
その1人、マネージャーの高橋杏佳さん(16)=2年・秦野北=は「テレビで甲子園の試合を観て高校野球に憧れた」。入学から1年、選手を支えてきた。この夏で引退する4人の先輩たちに「悔いのないように全力を出し切ってほしい」とエールを送る。
2人の3年生
小倉圭裕くん(17)=3年・湘光=と阿部純弥くん(17)=3年・国府津=は1年からのチームメイトだ。
小倉くんは山口県岩国市から大井町の湘光中に転校し野球部に入部。高校でも野球を続けたが2年の秋に一時部を離れたこともあった。2度経験した夏ではまだヒットを放っていない。
主将として迎える最後の夏は「ずっと応援してくれた両親のためにも、何とかいいところをみせたい」と初安打、初勝利をめざす。
阿部くんはソフトボールの経験を活かし国府津中で野球を始めたが「3年間ほとんど幽霊部員だった。今度は絶対に後悔しない」と思いを新たに野球部に入っ た。入部当時の先輩はわずか4人だったが「続けるのは自分の問題。そこは何も気にならなかった」と、チームで唯一、3年間野球を続けた部員だ。
去年の夏、センター前に放ったヒット。その高揚感は今も鮮明だ。最後の夏に向け「全力を出し切るだけ」と静かに闘志を燃やす。
1年生と監督
そんな野球部にこの春、新たな部員と指導者が加わった。ただ1人の1年生、石原拓真くん(15)=渋沢=は「今までに経験したことがない少なさに驚いた」 と戸惑いもあったが「自分が入れば人数が増えると思った。初めは不安でしたが、先輩たちが優しくしてくれた。先輩のために一つでも多く勝てるよう貢献した い」と初めての夏に挑む。
野球部顧問の高橋直也教諭(24)はこの春、長年目標にしていた”高校野球の指導者”になった。
高校時代は愛知県内の公立高校で2年生から遊撃手のレギュラーに定着。60人の部員をまとめるキャプテンも務め、夏の予選では勝利も敗北も経験した。
日体大では準硬式野球を続け、卒業後は愛知県内の公立高校でコーチをしながら教員試験に挑み続けた。
愛知での夢実現はかなわなかったが、3度目の挑戦で神奈川県教委に採用された。「全国一の激戦区。憧れでもある神奈川に来れて嬉しい」と話す。
今年2月、大井高校への着任が決まり校長から野球部の顧問を任された。
「人生でこんなに熱くなれるのか、というほど熱くなれる」のが高校野球。「ここまで来たら技術的な進歩は少しだと思うが、充実感を持って試合に臨めばこの先の人生の何かにつながる」と選手を鼓舞する。
3年生の引退で部員が3人になるが「目標は甲子園」と新たな夢に曇りはない。
神奈川の聖地へ
5月には3年生の長野航也くん(18)=酒匂=と江川優輝くん(17)=国府津=が入部。6月には1年生の夏以来、休部していた2年生の小池紀之くん(16)=秦野南=も復帰した。
その大井は高浜(平塚市)との合同チームで選手権大会に挑む。7月14日(火)の1回戦では神奈川野球の聖地、保土ヶ谷球場で海洋科学(横須賀)と対戦する。「大きな舞台。緊張すると思いますが全力でやる」と主将の小倉くん。
この一戦で勝利すれば12年ぶり初戦突破となる。プレイボールは14日午後1時30分。
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