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足柄 人物風土記

公開日:2016.12.10

共和地区に移住して山づくりに参加している
冨田 陽子さん
山北町皆瀬川在住 32歳

種を育て、山を育む



 ○…山北駅から比較的近く、ハイカーにも人気の大野山。その一帯に広がる12ヘクタールの山が仕事場。身長150センチ台、バイザー付きの黄色いヘルメットに地下足袋、ニッカポッカが正装だ。そのいでたちとは対称的に口調はおっとり系。「ほとんど山と家の往復。まちに行くのは買い物の時くらいですね」と肩をすぼめ、写真撮りを前に軽トラの運転席に乗り込み眉をひいた。



 ○…大手ゼネコンに勤務する父と専業主婦の母のもとに生まれ、子どもの頃は関東圏を転々とする暮らしだった。中学生の頃から次第に森や山に関心をもつようになった。「何がきっかけかは定かではない」が、草花が好きな母の影響もあったという。テニスに没頭した中学時代に芽生えた山への憧れは、水泳部で練習に明け暮れた高校時代にも変わらず、農学部がある国公立の大学を目指して受験。一浪して山形大学へ進み、生物環境学科で4年間、森を学んだ。



 ○…ずっと吉野杉の山に憧れていた。「本当は吉野(奈良)に就職したかった」というほど憧れた。森林組合などの門を叩いたが縁がなく、仕方なく少し南下して三重県の林業家を探しあて就職。5年間、林業の現場で働き、事務仕事を通じて山を取り巻く補助金行政の現実を知った。6年目に山仕事から離れワーキングホリデーで1年間、渡豪。ケアンズの北で熱帯雨林の再生に取り組む人口700人の村で暮らした。



 ○…帰国後に「種から苗木を育て山に植え、山を再生する仕事」を探し平塚市内の社会福祉法人で働きはじめ、法人と縁があった「共和地区のおじさんたち」と出会った。「思いだけでやっている」そんな人々の熱意と理想郷を見つけた。林業をめざすパートナーと、同じように共和に魅せられた若者4人で空家を借りて共和に暮らす。「山から戻りケーキや紅茶を飲みながら山の話をする毎日」そんな暮らしが目標だという。

 

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