豊玉香料(株)小田原工場の工場長を務める 大胡田(おおごだ) 稔さん 南足柄市沼田勤務 62歳
「モノの前に人づくり」
○…災害発生時に、敷地内の食堂を開放して帰宅困難者を受け入れる防災協定を南足柄市と締結した。香料や食品添加物、化学薬品などを扱う工場の責任者として「ご迷惑をかけていないか」と気を配り、以前は香料の匂いからあったクレームも「近年ではなくなってきている」と安堵の表情。「地域のお役に立てれば」と常々気にかけ、地元自治会の祭り参加や、中学生の工場見学の受け入れなど、思いを形にしてきた。
○…横浜で生まれ育った。子どものころは「気が小さく人前に出て引っ張るようなタイプではなかった」。高校を卒業して大手化粧品会社に就職し、製造から品質管理、技術・開発を学び、始発の新幹線で銀座の本社まで通った時代もあった。20歳で社内結婚し、30歳で「夢のマイホーム」を実現させたが、50歳を目前に母にガンが見つかると看病のために仕事を辞め、縁があって今の会社に転職した。
○…「住みやすく、子育てするには良い所」と足柄平野に居を構えた。今では上2人は家を出て孫が2人。「近所で遊んでやるのが楽しみ」と目尻を下げるが、もうすぐ家の近くから引っ越してしまうのだとか。たまに妻と旅行に出掛け、京都まで日帰りで行ったこともある。夫婦旅行に「3人兄妹の末っ子も『私も行く』なんて言うのだけれど、美容師で休みが合わなくてね」と困ったように話すが、どこかうれしそうだ。
○…長年のサラリーマン生活で、上司や部下と飲みに通ったスナックで歌ううち積極性が増し、自信もついた。「じっくりと話を聞けるから」と今でも、こうした飲み会を大切にしているが、近ごろは「ドクターストップ」を理由にもっぱらお茶での参加だとか。「モノづくりの前に人づくり」をモットーに、良い人材を残すことが会社への恩返しと考え後進の指導に力を入れる。日本橋に本社がある創業92年の会社で取締役と工場長を兼任している。