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足柄 人物風土記

公開日:2017.04.29

藤の花咲く自宅の庭園を30年以上一般開放している
長井 光枝さん
南足柄市千津島在住 83歳

藤が紡ぐ縁で笑顔咲く

 ○…子どもが山から採ってきた藤を一本畑に植えたのが事の始まり。藤は見事な紫の花を咲かせ、ご主人の心を鷲掴みに。兼業農家だったが共働きで面倒を見きれずにいた畑は、どんどんと藤色に染まっていった―。藤は藤棚にするのが一般的だが「立ち木づくり」という、上へと伸ばす方法で栽培している。県内外から多くの人が足を運び、ご近所も手伝いにやってきたりと大賑わい。「藤がくれたご縁に感謝しなきゃね」

 ○…父が通信関係の技術者をしており、戦時中に中国の天津で生まれた。「学校の先生を戦地に見送った覚えはあるが、戦中戦後の怖い思いはしなかった」と当時を振り返る。小学6年の時に松田の実家へと帰国。中学を卒業し、2年ほど商人の家に住み込みで働きに出た。その後花嫁修業をする中、19歳で開成町に嫁いだ。「気が付いたらとんとん拍子で話が進んで、気が付いたらお父さんと結婚してたのよ」と笑った。

 ○…結婚してから自動車部品を扱う工場に勤めた。初めての仕事はすべてが真新しく、会社での人付き合いも楽しくて、毎日胸をときめかせ出勤した。山ほどのイチゴを収穫し農協へ納めてから出社する、多忙だけれど充実した毎日を送ったが「もっと子どもの傍で成長を見守りたい」と転職を決意。時短勤務で製本の仕事に就いた。「本が一冊できあがるまでに関わり、その宝物を手渡せるのは幸せだった」。仕事同様、家事にもより一層身が入った。

 ○…ご主人は10年ほど前に病気を患うも藤の手入れは続けた。庭にカセットテープを持ち込み「体調が良い時は渥美二郎の『夢追い酒』を口ずさむの」と遠い目。6年前に子どもたちとご主人を看取った。遺してくれた藤園に、今は子どもと一緒に愛情を注ぐ。「手入れが大変な時は仏壇に文句言っちゃうの」といたずらっ子のように笑った。来園者からの手紙は全て仏壇に供えてある。藤が今年も見ごろを迎える。

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