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足柄 人物風土記

公開日:2019.05.18

和紙のわらべ人形の創作作家として作品を作り続ける
露木 盛枝さん
山北町山北在住 83歳

いまが一番幸せ

 ○…まつりで賑わった駅周辺。一角にあるふるさと交流センターに立ち寄った時に白い和紙の人形に目がいった。国の重要無形民俗文化財「山北のお峯入り」を題材とした作品群だった。「町で個展を開いてから何度か展示しています。評判が良くてね。嬉しいです」とにこやかに語る。お峯入り公演を見て、写真等も参考にしながら多数の配役の創作人形を作りだした。いまにも動きだしそうな表情豊かな人形たちに顔のパーツは描かれていない。「私がつくる人形は顔を描かないの。見る人それぞれに感じとってもらいたいから」

 ○…60歳まで幼稚園や保育園の先生を務めた。教え子は多い。「皆大きくなっても声をかけてくれる。有り難いですね」。定年を前にして「生涯楽しめるものを」と、押し花や人形、絵手紙を始めた。人形は駒子人形から始め、NHKのおしゃれ工房の本を見て「童人形」に魅了される。「人形に色気を出すのは難しい。わらべは私にぴったりと思ったの」。その作家に師事するため、都内まで一カ月に1回通いつめた。

 ○…絵を描き、町の教育委員長なども務めた夫とは、定年後に2人で個展を開くことが夢だった。数回目の2人展の準備をしていた時に、夫が仕事先で倒れて帰らぬ人に。「突然のことでショックでした。立ち直れなかった」。孫の面倒などを見る中で少しずつ癒されていく。夫が亡くなり15年目を迎えた。趣味の手仕事と共に日々の自炊も楽しみ。「七草粥、団子づくり」など歳時記の暮らしを大切にする。「人のことをやっていると思うな。全部自分のことになる、と言われたことが今わかります」。幼い頃優しかった母との思い出や、育った清水の暮らしを人形で表現していきたいという。「今が最高に幸せ」。花のような笑顔に惹き込まれた。

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