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箱根・湯河原・真鶴 人物風土記

公開日:2018.10.19

世界マスターズ陸上競技選手権に出た
小笠原 修さん
湯河原町吉浜在住 70歳

誰かの努力、見逃さない

 ○…取材場所は小田原の城山陸上競技場。地面に寝転がり、足を空に向けて描くように動かしていた。入念にストレッチするのは理由がある。右ひざに貼ったテープは10年前にハードルで転んで怪我した所で、1年のブランクになってしまった。タタタタと軽やかに駆ける姿は70代という年齢を感じさせないが「昔に比べて疲れが取れなくなりました」とぼやいた。何度もトラックをダッシュし、息を整えながら元のスタートに戻る。自分の体と対話しているよう。

 ○…9月にスペインまで飛び、国際大会に出場、70歳以上のハードル競技で目標にしていた決勝で、見事3位になった。記録は13秒93。銅メダルを手に帰国した感想は、上位になった喜びではなく「やりたい事をやらせてくれている妻への感謝を感じた」としみじみ。陸上には風を切って走る心地良さ、達成感だけでなく、仲間に会い仲間をつくる交流の醍醐味もある。

 ○…出身は島根県で高校時代に陸上部に入部。大学は体育学部を選び、運動に携わっていたい思いで中学の保健体育教員の道へ。定年退職するまで湯河原中学校や真鶴中学校、箱根の旧湯本中学校などで教えた。どんなに教えても、できる子、できない子がいた。「みんなが11秒台で走れるわけじゃない。でも、みんなで挑戦することはできる。それぞれの努力を認めてあげる事が大切なのかな」。今も湯河原中陸上部には時折顔を出して、練習を見守っている。

 ○…練習は1本1本の走りを「いかに集中できるかが重要」と説く。それなのに自分だけでなく、仲間の走りも気がかりな様子でじっとフォームを観察しては、そっとアドバイス。仕上げるように仲間と全力疾走してから苦しげにつぶやいた。「今日は深く練習した」「いい練習だった」

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