男性消防士に混じって火災現場に駆けつける湯河原出身の女性がいる。梅原遥さん(23)は、厚木市消防本部でただ一人の女性消防士。消防学校時代から負けず嫌いの性格で体を鍛え上げ、憧れを現実に変えた。 男性消防士に混じって火災現場に駆けつける湯河原出身の女性がいる。梅原遥さん(23)は、厚木市消防本部でただ一人の女性消防士。消防学校時代から負けず嫌いの性格で体を鍛え上げ、憧れを現実に変えた。
「努力しか取り柄ない」
重厚な防火服や防火帽で身を固めても、女性らしさが消えないのが不思議だ。さらにマスクやボンベを着用し、炎上する建物に入る事もある。消防士を目指すようになったきっかけは、湯河原中学校の頃に見た「緊急密着〜」のテレビ特番。公務員の専門学校を経て念願の消防学校へ入学した。高校時代は陸上7種目で県大会4位など体力には自信があったが、高いハードルが待ち構えていた。反復横跳びやシャトルランなどの体力試験でどうしても懸垂だけができない。採点は最も低得点だった種目で評価されるため、1度も上がらなければ0点に終わる。頭に浮かんだのは「自分には努力しかとりえがない」という開き直りと、湯河原中時代に恩師に言われた「努力型の天才になれ」の一言だった。
その後ひたすら汗を流して特訓し、目標の12回をクリアするまでに。200人以上いる同期の中でわずか10人の体力賞に選ばれ、その後厚木市消防本部第一号の女性消防士として配属された。
男性同様に活躍しやすい職場環境も大きい。トイレはもちろん、洗濯機や仮眠施設まで男女別になっている。「上司が目標を受け止めてくれるのがありがたいです」。すでに大型免許や船舶の免許も持っており、目標はオレンジ色の制服をまとったレスキュー隊員。厚木市は山岳救助や潜水救助(河川)もあり、資格取得を目指す潜水士も長い階段のひとつだ。
消防団員の父
背を見て育つ
実家は鮮魚店。父の俊光さんは早朝から市場に出かけ、夜は注文の電話を受ける。ただでさえ多忙なのに消防団員としてよく訓練に参加していた。自分が隊員となった今、現場で力になってくれる消防団の有難さを痛感するという。休日には実家に戻り体力作りも兼ねて幕山に登ることも。「実家で扱う魚はどのスーパーよりも美味しい。小さい頃から舌が肥えてます」とにんまり。母と台所に立ち、祖父の代から受け継がれる煮魚の味を継ぐのが目標。オンでもオフでも一歩ずつ本物に近づいている。