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秦野 コラム鵜の目鷹の目

公開日:2015.04.23

Vol.13
鵜の目鷹の目
秦野市元教育長東海大学講師 金子信夫

島 秋人



 死刑囚、島秋人(しまあきと)本名中村覚は、昭和42年11月2日に32歳の若さで処刑されました。



 昭和9年に生まれた彼は、病弱な上、小中学校での成績は常に最下位で皆から馬鹿にされ、貧乏、周囲から冷たく扱われる中で、衝動的な喧嘩や盗みなどで少年院の出入りを繰り返していました。



 昭和34年農家に盗みに入ったところを主婦に見つかり、もみ合いの中でその主婦を殺してしまいます。



 死刑の宣告を受け、死刑囚としての刑務所生活の中で彼は、中学校の時、たった1回だけ美術の吉田好道先生から「君の絵はへたくそだけど、構図は一番いい」と皆の前でほめられたことを思い出します。



 そのことをなつかしく感じた彼が先生に手紙を出したところ、間もなく予想もしていなかった返事が先生から届きます。その中に先生の奥さんの短歌が入っていました。その手紙と短歌が、歌人「島秋人」を誕生させ、死刑囚に人間の心を呼び覚ますことになります。



 「世のために



 なりて死にたし死刑囚の 眼はもらい手も



 なきかもしれぬ」



 「いのち」や「生きていること」の尊さや重さをどのように子どもたちに伝えていくべきか、殺伐とした事件が頻発している現代社会の大きな課題です。



 子どもに必要なのは「批判」より「模範」だとはローレンツの言葉ですが、暖かい心を持った「いのち」は暖かい心によってのみ育まれ、生き続ける喜びを得ることができます。



 子どもとの毎日の関わりを大切にするとは、その子の一生を大切にすることであることを死刑囚島秋人は語りかけています。

 

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