防災特集
関東大震災から100年
遺構など通し防災考える

関東大震災直後の震生湖（宇山忠男氏所蔵）

　１９２３（大正12）年９月１日11時58分に神奈川県西部の深さ23Kmで発生した関東大震災。マグニチュード７・９の地震は各地に大きな被害を出し、秦野でも地滑りで「震生湖」が生まれるなど大きな爪痕を残した。今年９月１日で震災発生から１００年-人々の記憶からは薄れつつあるが、その被害を忘れないよう残された慰霊碑などが市内各所に点在している。

　関東大震災は神奈川県、東京都、埼玉県、千葉県、山梨県で震度６（当時の震度階級。現在の６弱〜７）を観測した地震。北海道道南から中国・四国地方にかけても、広範囲で震度１〜５を観測した。昼食時間と重なったことで多くの火災が起きたほか、家屋の倒壊や道路・橋脚の損壊、土砂災害なども発生。相模湾から房総半島で数ｍ〜10ｍを超える津波も観測された。

　震災による死者・行方不明者は10万５千人余。秦野市内でも死者１７１人、行方不明者10人、家屋被害も全壊１４９０戸、全焼２３３戸、半壊２６４０戸など大きな被害が出た。

市内各所に残る記録

　また、地震によって斜面が幅約２５０ｍにわたり地滑りを起こしたことで滑落した土砂が川道（市木沢）をふさぎ、谷川の上流に「震生湖」が誕生。震災遺構であると同時に１００年経った今でも「湖面」「崩落地」「堰止地」が現存する稀有な存在として、２０２１年３月に国登録記念物（動植物地質鉱物関係）に認定されている。

　他にも中心市街地で２７１戸が焼失した震災による火災が手前で鎮火し「火伏せの神」として地域の信仰を集めた話が残る古峯神社（寿町）や、土砂崩れで15戸が流出し集落移転したことを伝える蓑毛の看板、玉伝寺（名（な）古木（がぬき））の供養塔と「いとこ地蔵」、菩提会館前の復旧記念碑、命徳寺（河原町）裏の広場や龍法寺（南矢名）の震災横死者供養塔、戸川の住宅街（仙元大神碑そば）の復興記念碑、掘之郷正八幡宮（堀山下）の震災復旧記念碑、峰坂（平沢・震生湖バス停付近）の大震災埋没者供養塔など、当時の被害を物語る石碑などが現在も市内各地に残っている。

　これ以外にも１９８２（昭和57）年に編集された関東大震災体験記が市ホームページで公開されており、地割れや土砂に飲まれかけた話、倒壊する家の下敷きになりかけた話など45人の体験談が綴られている。

　いつか必ずくると言われている首都直下型地震。予知できない地震に対しどう備え、いざという時どう行動するか。１００年前の震災を改めて学び、考えてみては。