「人にまぎれたい」という想い

　毎月第4土曜日に上鶴間公民館（南区）で開催される「かみつるまひまわり食堂」は、近隣に住む市川さんが2023年4月に始めた食堂だ。市川さんに話をうかがった。

　「子ども食堂をやりたいという気持ちがありましたが、その活動が、経済的に困っているご家庭の支援に本当につながるのか不安がありました。そこで、実際に生活に苦労されている子育て中の方にお話を聞いたんです。すると『対象をしぼられると参加しづらい』『いろんな人が食べに来ているなかにまぎれたい』という想いがあることを知りました。そこで、どんな人でも参加しやすい場所を目指し、参加者の間口を広げることにしました」

「食堂」だけにとどまらない交流の場

　現在ひまわり食堂は、高校生までの子ども・親・75歳以上の高齢者を対象に予約制で50食、多い日は100食ほどを作っているという。活動を続けるなかで、近くの障がい者支援施設で作る菓子パンや、住民の方から野菜やコロッケなどの寄付が集まるようになり、食事に加えて寄付品を詰め合わせた『お土産』も提供している。また、別室で絵本の読み聞かせや、子ども服のお譲り会、地域の高齢者による昔遊び体験など、「食堂」だけにとどまらない交流の場となっている。

　「『ここなら何かできる』という地域の方の気持ちをキャッチできる場になってきていると思います。みんなが安心できる居場所になれば」と市川さん。人が集う場を必要としているのは、経済的に困っている方だけでないようだ。

「社会にやさしくされてしかるべき人」へ

　毎月第2・第4金曜日に中央公民館（中央区）で開催される「子ども食堂ちゃお！」は、まだ子ども食堂という言葉が定着する前の2016年頃から活動を開始した団体だ。代表を務める坂本さんに話をうかがった。

　「開始当時はなかなか周りから理解を得られず、会場を転々としながら現在の場所に落ち着きました。子育て中の親子の参加が多いのですが、コロナ禍は会場で食べる形式を中止し、お弁当配布にしていた時期もありました。ただ、お弁当だとがっかりする方たちも多くて。食べることよりも会って人と繋がる場が重要なんだなと感じました」

　子育て中の孤立しがちな親同士がつながる場として、活動を続けてきた子ども食堂ちゃお。しかし、活動期間が長くなるにつれ、対象者について課題が出てきたと坂本さんは話す。

　「活動を開始して数年は『子どもも親も誰でもどうぞ』という方針で運営していましたが、参加者がどんどん増えていき、子どもが一人で訪ねてきても食事が足りずお断りすることが出てきてしまいました。対象者を、『子どもは誰でもどうぞ』大人は、言葉のニュアンスが難しいんですが、『社会にやさしくされてしかるべき事情がある人・ご家族はどうぞ』という風に対象をしぼる決断をしました。たくさんの方に利用していただいていたので、理解を得られるか心配でしたが、大きな混乱もなく転換することができました」

『みんなでつくる居心地のいい場所』

　長年やってきたからこそ参加者との信頼関係ができ、方針転換の理解もスムーズに進んだと話す坂本さん。

　「社会にやさしくされてしかるべき事情」に関しては、申告も詮索もしないスタンス。それでも特に問題は起こっていないという。

　「この食堂のテーマは『みんなでつくる居心地のいい場所』。そういう場所を作るにはどうしたらいいか、参加者も含めて一緒に考えるようにしています」と話す坂本さん。

　子ども達の将来を見据え、一人ひとりに寄り添った活動を続けている。

　活動を続けながら、地域の"色"や参加者の声をもとに少しずつ形を変える子ども食堂。

　市社協は、このような「子どもが安心して過ごせる場所」が地域に増えることを目指し、子ども食堂や無料学習支援等子どもの支援を行っている。10月1日より始まる「赤い羽根共同募金運動」で集められた募金も、その支援の一部に充てられている。

　赤い羽根共同募金については、市社協ホームページをご覧ください