住民、警察、アーティストらの協力によって、売春地帯が芸術の街に変貌する様子を描いた阿川大樹(たいじゅ)さん(61)=人物風土記で紹介=の小説、『横浜黄金町パフィー通り』(徳間書店・2014年)の舞台化が決まり、5月25日に中区内で制作記者会見が行われた。
かつて黄金町は小さな違法風俗店が約250店舗立ち並び、生活環境の悪化が問題となっていた。2005年1月から住民、警察、行政が協力し、違法店舗の摘発や、24時間体制のパトロールを行うなどした「バイバイ作戦」を実施。違法店舗が摘発された後の街づくりに芸術家らが参加し、違法店舗の跡地は、アトリエとして活用されるなど、現在は芸術の街へと生まれ変わっている。
同作は、カメラマン志望の女子高生、志織が、撮影場所を探しに偶然黄金町へ迷い込み、カフェマスターの山名を通じて、この町の歴史に触れるというストーリー。
舞台のシナリオは原作がベースになっている。黄金町に違法風俗店が立ち並ぶようになり、住民が立ち上がった2002年、女子高生志織がアートの街に変貌を遂げた黄金町に迷い込む2007年。ここまでは原作通りの展開だが、舞台オリジナルのストーリーとして、2015年の現在が加わり、3つの物語に分けて展開される。
「過去知る機会に」
今回の舞台の総合プロデュースを務めるのは、黄金町に拠点を置く「劇団!王子の実験室」主宰の田口浩一郎さん(37)。
田口さんは、「市の予算が増えず、アートの街が縮小傾向にある。地価が上がってくれば、経費削減で拠点を他に移すアーティストも出てくるのでは」と話し、アートの街でなくなれば、元の違法風俗店業者が戻ってくるのではないかという危機感を持っていた。
そして、昨年6月に発売された同作を読んだ田口さんが、同9月、「過去を知る機会に」と原作者、阿川さんに舞台化を持ちかけた。黄金町に事務所を置く阿川さんとは、度々稽古場で顔を合わせるなど、以前から親交があったという。
田口さんは、「舞台は音楽や芸術、お芝居、何でもできるので、今回の舞台をアーティストと劇団の人材交流の機会にできれば」と舞台化のもう一つのねらいを語った。
黄金町エリアマネジメントセンターの山野真悟事務局長は、「かつての黄金町を知らない世代が出てきた。こうした過去の街の歴史を風化させないようにしたい」と話す。
稽古は6月1日から開始され、舞台は10月9日から12日まで、中区海岸通のBank ART Studio NYKで行われる。
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