藤沢市書道協会の第16代目会長として60周年記念の藤沢書道展を開催する 宇佐美美泉(びせん)さん 鵠沼石上在住 76歳
一筆、二筆で広がる「和」
○…書道芸術の向上と普及をめざす「藤沢市書道協会」の16代目会長として、60周年記念誌の作成や書道展の準備に追われている。「時代遅れで忘れられがちだけれど、良い書はしなやかで新鮮な潤いを与えてくれる。次世代により良い書道文化を伝えていきたい」。静かなる情熱を燃やす。
○…藤沢小、第一中の出身で、書道との出合いは高校生のころ。「実は、選択授業で美術と音楽が苦手だったから、書道を選んだ」とはにかむ。就職後も細々と続け、師匠の下、26歳から本格的に取り組んだ。45年前に書道協会に加入し、結婚や出産を挟みつつも、ずっと筆を握ってきた。「都内の展覧会へ行った後、いくら疲れていても、一筆、二筆書いてみたいなって思うんです。好きだから、続けられるんでしょうね」
○…最盛期は200人近くの会員数を誇った協会だが、約140人に減り、さらには高齢化が進んできた。自身の書道教室に通う子どもたちも、「小学4、5年生になると、塾や稽古事で書道をやめてしまう」と、ちょっぴりさびしそうだ。近年は会員を書道ボランティアとして小・中学校へ派遣。姿勢や筆順、バランスなどを丁寧に指導し、後進育成にも励む。「書に携わる者として、少しでもお手伝いが出来れば。子どもたちが喜んでくれることも励みになる」。昨春は藤沢駅北口の「和ごみフェスティバル」にも参加し、書とふれあう場を広げている。
○…温かみのある草書体を好んで筆を執る。「うまく書こうとは考えず、ゆったりと書くように心掛けている。雑念が入るとダメですね」。近年はパソコンやスマートフォンの普及によって、文字は「書く」から「打つ、タッチする」時代に。「手書き文字には一人ひとりの味わいがあって、温もりや人柄、思いまで伝わる。書を通じて多くの人との『和』を広げていきたい」。自身のたおやかで温かみを感じられる書のように、心を尽くした活動を進めていく。