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緑区 社会

公開日:2025.11.20

三保町在住苅谷さん
歌集『視野が飛ぶ』を出版
「ありのまま」を短歌に込め

  • 歌集を手にする苅谷さん

  • 『視野が飛ぶ』の表紙

 三保町在住の苅谷君代さん(67)がこのほど、第6歌集となる『視野が飛ぶ』をながらみ書房より出版した。2020年春から25年春の間に詠んだ420首の短歌が収められている。

 苅谷さんは先天性緑内障で生まれつき視力が低く、これまでに約10回の手術を受けてきた。現在の視力は右目の0・01のみ。「今の私は輪郭や色彩や文字など、ぼんやりとしてよく分かりません」。目が見えなくなっていく変化も表現の対象であるといい、「それはそれで表現できる。ありのままの状態を歌いたい」と精力的に短歌を詠み続けている。歌集タイトルの「視野が飛ぶ」には、見えなくなることを悲観するのではなく「私にとっては夢や言葉や未来が、自在に飛んで広がっていくイメージ」と前向きな思いを込めた。

・わが書きし文字が桜の

 花びらとなりて幼子の

 肩に降る夢

・目を閉ぢてをれば狂気

 のごとき闇 ひらりと

 文字が虹色に飛ぶ

詠むこと 諦めずに

 高校2年生の時に北原白秋の弟子であった鈴木幸輔氏に出会い、短歌を始めた苅谷さん。みずみずしい感性で詠んだ短歌をまとめた歌集『雲は未来の形して』を自費出版すると全国学芸コンクールで奨励賞を受賞した。その後も数々の歌集を出版し続け、5年前には読売新聞の詩歌コラム「四季」で10回に渡り連載された。

 現在は「塔短歌会」の会員として活動する苅谷さん。ガイドヘルパーなどの支援を受けながら各地の歌会に参加する。美術や古代の遺物の鑑賞にも積極的で、実物と対峙して目に見えないストーリーや歴史に思いを馳せるという。特に、晩年に視力が低下した後も作品を描き続けたと言われるクロード・モネには自らの境遇と重ね合わせることもあるという。

・「見えなくなる」確か

 な未来がわれにあり睡

 蓮を描きつづけたるモ

 ネ

・見えてゐたころのわた

 しが見たモネの睡蓮い

 まも記憶に咲けり

 今回の歌集の帯には細胞生物学者で歌人としても活動する永田和宏氏から、「『視野が飛ぶ』不安のなかで、なお『これから』という時間に己の未来を託そうとする作者の歌は、私たちを励ます(後略)」と言葉が綴られている。苅谷さんは「この言葉に励まされる。いろいろな人の支えがあり歌を詠み続けることができる。私にできることは前を向いて諦めないで歩いていくこと」と力強く語った。

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