7月1日付で横浜市歴史博物館の館長に就任した 鈴木靖民(やすたみ)さん 栄区在住 70歳
今日も歴史 どこでも歴史
○…「歴史に興味を持ち、楽しみながら知ってもらいたい」。館内には、原始から近現代までの文化財を来場者が好きな時代から見られるように展示。一歩足を踏み入れた途端、その時代にタイムスリップしたかのような感覚を覚える。「歴史を知って、市民としての自覚と誇りを持って欲しい」と語る。その口調は、真面目で冷静な印象だが、眼差しは柔らかく、「来場者を楽しませる」という館作りへの熱い情熱が感じられた。
○…館長の傍ら國學院大学の教授も務め、文学博士で古代史を専門とする。古代の日本と東アジアとの交流をテーマにしたものなど、多くの著書を発表している。実際に海外に赴き、中国・韓国・ロシア・フランスなどの5ヶ国語を操り、各国を股にかけて研究を続けている。
○…出身は北海道。高校の時、地元でアイヌ民族の文化にふれたのがきっかけで歴史にのめりこんだ。文字を持たず、節にのせて語る叙事詩「ユーカラ」。語られる文化や伝説からは、人々がどのように生きていくのかが伝えられている。一瞬で惹かれ、夢中になった。進学では、アイヌ語研究の第一人者、金田一京助教授がいる國學院大學を志した。入学後、勉強を重ねていくうちに「歴史を知ることは、私たちの現在のあり方を知ることにも繋がる」と実感。それからは、みんなにも”歴史”が語るものを伝えたいと考えるようになった。
○…土日は全国各地で講演を行うなど忙しい毎日。「奥さんには『いつになったら相手してくれるの』と言われているよ」と肩をすくめる。それでも休日があれば、奥さんのリクエストで美術館を巡る愛妻家。「絵を見ている時が一番癒されるよ」と話すものの「風景画を見ると、ついその土地の歴史を考えてしまうんだ」と苦笑い。毎日、そしてどんな時も歴史を見つめる。その姿勢が、館作りのアイデアとなり、活かされていくのだろう。
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