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瀬谷区 社会

公開日:2023.11.23

伊藤吉治さん(瀬谷)
戦中の疎開体験、冊子に
自作のイラストを添えて

  • 完成した冊子を手にする伊藤さん

  • イラストで分かりやすく

 区内瀬谷在住の伊藤吉治さん(82歳)が10月末に冊子「大東亜戦争 愚かな舞台の上で 強制疎開体験記」を発行した。第二次大戦中の体験を自作のイラスト付きでまとめたもので、伊藤さんは「終戦から78年が経った今、このような時代があったことを多くの人に知ってもらえれば」と呼びかけている。

 伊藤さんは川崎市の生まれで、実家は酒屋を営んでいた。1944年の春に強制疎開によって、母親の実家があった現在の戸塚区深谷町に移り住んだ。

 冊子では、祖父と母親が押す人力馬車「大八車」に乗って鶴見川を渡り、東海道を下っていく様子が書かれている。急な上り坂で江戸時代に追い剥ぎが出たという大坂や、西風が吹きつけてくる吹上などを越えて母親の実家に辿り着いた。

 疎開先での暮らしぶりにも触れられている。「当時の体験が、後に私が絵を描くことになった大きなきっかけでした」と伊藤さん。解体した虫を運ぶアリの行列、獲物が巣にかかるのを待つ蜘蛛、草むらから出てきたカナヘビなど周囲に生息していた虫や小動物を、観察しては描くことが遊びになっていた。

 終戦日はラジオで玉音放送を聴き、祖父が涙する姿を初めて見たという。戦後は進駐してきたアメリカ兵の絵も描いた。

創作の原点

 伊藤さんは神奈川県警で働き、退職後の2001年に柔道場「善道館」を開館。絵が得意で、県警の広報用のイラスト、事件抑止や交通安全のポスター、シンボルマークなどを作成したという。また、イラストを新聞社に寄稿するなどしていた。

 「大人たちの苦労とは異なると思うが、子どもの視点から見た戦争の様子が少しでも伝われば。改めて平和の大切さを感じて欲しい」と伊藤さん。自身の創作活動の原点を改めて振り返る目的もあったという。

 冊子は31ページ。500円(税込)。詳しい問い合わせは伊藤館長【携帯電話】090・3096・1955へ。

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