第214回 男のおしゃれ学 「諦めない忍耐力でチャンスを待つ」パリ本部FIMT国際デザイナー中嶌 敏男
8cmほどのトンボが風の力を利用して、60キロのスピードで津軽海峡を渡り北海道に渡るという。日本では2百種存在するトンボ。詩や歌に出てきて愛される虫である。
虫といえば、20代の頃に出会い、自己変革をおこしてくれた小説がある。芥川賞作家、尾崎一雄の「虫のいろいろ」という短編だ。物語中「何気なく空瓶の栓をとると、中から1匹のクモがすごい勢いで出て来た」というエピソードがある。主人公が記憶を辿ると、半年も前に栓をしたもので、その時に入ったのだろう。この間、クモは何も食わず「凝(じ)っと、機会の来るのを待った」のである。忍耐力と決して諦めない信念を持てば、必ずチャンスがやって来るということを教えてくれた。勉強より大切な事がその物語に示されていた。
筆者が生まれた頃は団塊世代700万人の中から、どう生き抜くか必死であった。悪い事は聞き流し、いい話は胸に納め、石を積んでは願い事をし、心の整理を付けていた。
今の若い世代にも格差社会という厳しい現実がある。どんなに正直に生きても天敵が必ず現れる。それによって学校や職場を放棄し引きこもる人が多いのも事実だ。それを咎めることよりも、「クモ」のように諦めず、忍耐力を持ち、チャンスが来るのを待つ重要性を伝えることが、大切なのではないだろうか。
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4月18日