生命の尊さを生徒に考えさせようと、秋葉中学校が全学年を対象に11月28日、広島で被爆経験をした末岡昇さん(82)の講話を聞く授業を行った。末岡さんが過酷な体験談を語るにつれ、会場となった体育館は静寂に包まれていった。
「全校道徳」として行われたこの授業。生徒に多角的に原爆・核を捉えさせるため、8人のアメリカ人が広島、長崎に投下した原爆を肯定するか、否定するか討論を行う――ストーリーの小説「ある晴れた夏の朝」のあらすじを事前に読ませ、自由に自分の考えをワークシートに記入させた。その上で広島平和文化センターが委嘱している被爆体験伝承者の末岡さんの講話を行った。念入りに準備を整えた理由を狩野久幸校長は「核問題は難しいが、中学生の段階で考えさせたかった」と話す。
「自分のこととして考えて」
1937年東京に生まれた末岡さんは、7歳のときに父親の生家があった広島市に転居。祖父母などからなる大所帯で暮らしていた。迎えた8月6日は前日から偶然にも、自宅から約20キロ離れた宮島町に弟を出産したばかりで、転居していた母親に会いに行っており、直接被爆することはなかった。「朝、涼みに海に出たところで、もの凄い閃光と鈍い音が鳴り響きき、上空に白い大きな雲が上がっているのを見た」とその瞬間を振り返り、「私は12日後の18日に広島市に入った『入市被爆者』となる」と語った。幸い父親は生存していたが、祖父母などは命を落としてしまう。
その後、父親は肺がんで亡くなり、自身も大腸がんなどを3回経験する。末岡さんは「核根絶は難しい。しかし今後も市民レベルで訴えていきたい。子供たちには『自分の身に起きたら』という視点で核兵器を考えてほしい」と話す。
事前学習の段階では原爆否定派は321人、肯定派126人だったが、講演後は肯定派22人と大幅に減少した。生徒の一人は「当初は肯定派だったが、末岡さんの話を聞き、原爆は絶対になくさなければいけないと思った」と語った。
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