神話に髪飾りで登場 藤原定家の伝説「テイカカズラ」 日本自然保護協会自然観察指導員 金子昇(富岡西在住)
「深山には霰ふるらし外山なる まさきの葛(かずら)色付けにけり」(古今集)
古事記の中に、天照大神が岩戸に隠れた時、天鈿女命(あめのうずめのみこと)は、ヒカゲノカズラを襷(たすき)に、マサキノカズラを髪飾りに、束ねたササの葉を手にして踊ったと記されています。「まさきの葛」は現在の「テイカカズラ」を指します。
テイカカズラは、山林や公園等の樹木に絡みつく蔓植物で、区内では普通に見られ、園芸種にも改良され、庭木として見ることができます。花の白い5弁花が捻れて風車状になり、甘い香りを漂わせ、特に夜強く香るので、夜活動するスズメガが花粉の媒介者になります。花は白から黄色へと色変わりします。果実は2本の細長い20〜25cmの莢(さや)状になり、熟すと裂けて中からタンポポの種子に似た可愛らしい種子が飛び出し、風に運ばれていきます。
葉は冬になると美しく紅葉します。
名の由来は、花の色と香りが南インド諸島原産の「丁子(ちょうじ)」に似ているため、「丁子カズラ」から転化しました。また一説には、歌人・藤原定家がこの植物に変身して、思いを寄せていた式子内親王の墓に、絡みついたという伝説からとも言われています。
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