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金沢区・磯子区 人物風土記

公開日:2014.10.09

古民家鑑定士で住育学校横浜金沢校の学校長を務める
金子 和さん
大道在住 43歳

「住育」で次代に古民家を

 〇…「先人の技術や知恵、文化がつまった古民家は日本の財産。だからこそ、次世代に残していかないと」。そんな思いを伝えるため昨年から、「住育学校」を始めた。「食育」と同じように「住まい」について学ぶことで、家は単なる入れ物でなく「家庭を築く場所」だと再認識して欲しいという。「日本の住宅の平均寿命は約30年。これは先進国の中で最低レベル。住育という言葉を広め、住まいの大切さを伝えていきたい」と力を込める。

 ○…実家は大道にある工務店。だが高校卒業後、目指したのは映画の世界だった。俳優の仲代達矢さんが主宰する無名塾で、10年近く役者修行に打ち込んだ。アルバイトで実家の仕事を手伝うこともあったが、当時は「この仕事、楽しくない」と感じていたという。「防腐剤を使った材木など昔は、自分にとって満足できない材料も使っていたからかな。言われたことだけやっていた感じでしたね」と苦笑いする。

 ○…「ガラッと変わったことをしたい」と40歳で有機農業を学ぶため熊本へ。そこに点在する古民家を見て魅了された。黒くなった柱や梁、重厚なたたずまい――家族の歴史そのもののような家を見て素直に「素敵だな」と思った。しかし住んでいる人の感想は「古くて嫌だよ」というもの。「古いものは悪い」という概念に疑問を感じた。約2年間暮らしたが、父親が病気に。家業はすでに兄が継いでいたが、それを助ける形で実家に戻った。

 ○…最初は「仕事に役立てば」という気持ちでとった古民家鑑定士の資格。だが、価値ある古民家が単なるモノとして壊されていく現状に「このままじゃマズい」との思いを強くした。「確かに自然素材で作った家は、家鳴りはするし、季節によって扉が締まりにくいことも。でもそれ以上に得るものがある」。家族間の関係や想像力、愛着――家が育てる様々な力を信じ、伝える努力を続ける。

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