大判カメラを使った銀塩白黒写真の個展を初開催する 長谷川 登さん 乙舳町在住 64歳
白黒は「色からの解放」
○…大判カメラのシャッターを切ると「ジィー」と重い音が鳴る。「1秒くらいのシャッター音が好き」。銀塩写真が写しだす世界に魅了され30年以上が過ぎた。「今はデジタルが主流だが、フィルムのプリントには奥行きがある」。今では希少となった大判カメラが可能にする白黒のなめらかな表現を味わってほしいと、自身初の個展開催を決めた。
○…生まれも育ちも野島。関東六浦中3年の時にカメラを手にした。「修学旅行のための記録用。その後中断していた」と笑う。だがフィルムの白黒写真は自然に意識に植えられた。再開したのは県庁入庁後。大判カメラを始めた1982年頃は、仕事が終わると深夜0時に中央高速を飛ばし長野や新潟に向かった。狙うのは早朝の横から差し込む光。15kgほどのカメラを背負い、山中や川沿いに踏み入ることも。だが貴重なフィルムゆえシャッターは「ここぞ」の時のみ切る。「一期一会ですから」と笑顔をたたえる。
○…写真館で撮影した甥の白黒写真の衝撃を今でも覚えている。白と黒の間にある無限の色。その表現力。「白黒写真は色からの解放」と目を輝かせる。10年ほど前からは白黒一本。空の白や建物の白、光の白――質感や表情に合う白色を探し検証してから撮影に入るこだわりようだ。現像も自宅の暗室で行う。条件を計算し、現像液から像が浮かび上がる瞬間に胸が躍る。「プリントまで自分でできるのが白黒写真の面白さ。表現は無限大です」
○…「とにかく野島が好き」と微笑む。幼少期に野島山から見下ろした埋め立て前の平潟湾が懐かしい。「あの風景は撮っておきたかった」。これからは古くから残る木造建築の美しさを撮影し、残していきたい。これまでゆうに1000以上、風景や建造物をフィルムに焼き付けてきたが「会心の一枚はない」と言う。「だからまだまだ追いかけるんでしょうね」。シャッターの快音がきょうも響く。
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