季節の花㉓ 美女西施にたとえた「ネムノキ」 夜は葉を閉じて眠る 日本自然保護協会自然観察指導員 金子昇(富岡西在住)
青空に映える「ネムノキ」の赤い花は、まさに夏の風物詩の一つ。夕方になると花が開き、10〜20個の小花がかたまって咲き出します。多数の糸状の雄蕊は、花火のようでよく目立ちますが、花弁は非常に小さく目立ちません。多数の小葉を持つ羽状葉は、夜になると折りたたむように閉じて眠るので、この名があります。
漢名の「合歓木」をネムノキと読ませていますが、別名「合歓」(こうか)ともいいます。ネムノキは日本、朝鮮、中国に分布しており、樹形は盃状で見栄えが悪く、日本では庭木としての価値は低いようです。
芭蕉の奥の細道の中に、秋田県象潟でネムノキについて詠んだ句があります。
「象潟や
雨に西施(せいし)が
ねぶの花」
西施とは、中国歴史上の四大美女の一人で、芭蕉は雨に打たれたネムノキを、西施にたとえて歌ったようです。中国の詩人・李白は西施について、次のような逸話を詩にしています。「ある時、西施が病気にかかり苦しかったので、しかめっ面をしたけれど、これがまた何とも言えずに美しかった」
最近熱帯アメリカ原産の「ギンネム」の花をしばしば見かけようになりました。ギンネムは常緑樹で、花はネムノキのような派手さはなく、白い小さな球状をしています。
次回は「カラスビシャク」の予定です。
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