8月にオープンしたドッグカフェ「のあのあ」で障害者を支援し、地域とのかけ橋を目指す 上原 陽子さん 釜利谷南在住 60歳
「好き」が障害者の居場所に
○…地域に愛されるカフェで障害者が働く風景が当たり前になったら――。カフェと作業所の機能を備えた就労継続支援B型の施設に、大好きな犬の要素をプラスしたドッグカフェ「のあのあ」ができあがった。初めてスタッフに迎えた利用者が「お客さんに、ごゆっくりどうぞって自ら言ったんです」と涙ぐむ。「自然体で働ける場所にしたい」
○…30歳、分娩台で息子の異変を感じた。ダウン症候群と告げられても、受け入れるまでに時間を要した。一方で夫は息子を外にどんどん連れて行く。下の弟2人はいつも、クラスの障害児の手を引いていた。兄の悪口を言われれば代わりに喧嘩する。「風が吹いても倒れない根っこの太い子に育てよう」。徐々に堂々と、親子で自信をつけてきた。
○…障害児を持つ母親の「気持ちの面のフォローはなかなか追いつかない」と、幼稚園や保育園で相談を受けてきた。だが、息子となると迷うことも。グループホーム入所を検討し始めた頃、自傷や破壊行為が激しくなった。「出ていけ」と伝わったらしい。後にようやく肌に合う作業所を見つけ、落ち着きを取り戻した息子に「自分で良いと決めたことなら納得して頑張れるんだと教わった」と穏やかに話す。だからこそ、のあのあは利用者の「好きなこと」を優先したい。接客やもの作り、商品開発まで……「できることを一生懸命やったら100点となる作業所を目指したい」
○…周りの支えで実った夢だ。施設の性質上、近隣の反応を心配したが「誰一人反対しなかった。金沢区はなんて良い街だろう」。店の装飾を手作りする人、品物を寄付する人。夫も三男も仕事を辞め、のあのあを支える。良いことが増えるよう名付けた母体のNPO法人”いーぷらす”。図らずも「あなたやわたし、皆の良いところがプラスされている」と喜ぶ。ドッグセラピーなど挑戦したいことはたくさん。「街の人に可愛がられる居場所になれば」
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