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金沢区・磯子区 文化

公開日:2025.06.05

富岡空襲を音楽劇で
戦争知らない世代から発信

  • 慶珊寺境内の供養塔

  • 潮の音主宰の滝澤さん

  • 京急富岡駅近くに今もあるトンネル

 太平洋戦争末期の1945(昭和20)年6月10日、横浜市金沢区富岡地区周辺の軍需施設が標的となり多数の死傷者が出た「富岡空襲」から80年。当時のことを伝えようと、音楽劇を通して未来につなげようと活動する人たちがいる。戦後生まれの戦争を知らない世代が、さらに次の世代に語り継ごうとする想いとは―。舞台芸術サークル「潮の音」代表の滝澤右弥子さんに話を聞いた。

 潮の音は、金沢区の民話や郷土史を音楽劇にし、公募の子どもたちと年に一度の公演を続けてきた。今年は戦後80年の特別企画として、かつて地域で起きた戦争の惨状を伝える「明日への願い・決して忘れてはいけないこと〜横浜・富岡空襲の記憶を未来に〜」と題した音楽劇を上演することにした。

爆弾で多数の死傷者

 富岡空襲は6月10日、現在の富岡総合公園付近にあった横浜海軍航空隊基地や、能見台にあった大日本兵器などの軍需施設をねらい、米軍が爆弾を投下。京急富岡駅近くの小さなトンネル(人道トンネル)に電車に乗っていた乗客が避難したが、爆風と熱で約40人が即死、周辺を含めると130人以上が犠牲になったといわれている。

 脚本・作詞・作曲は県立金沢総合高校吹奏楽部元顧問で現在は嘱託コーチの山崎栄一さん。山崎さんは、戦後70年の節目にも空襲の犠牲者が運び込まれた慶珊寺の佐伯隆定前住職の話を聞くなどし、富岡空襲の楽曲を制作。戦後80年を機にその時の楽曲を元に、多くの人にわかりやすく伝えたいと音楽劇として新たに書き下ろした。

悲惨な歴史を身近に

 劇の中心は音楽好きな母と娘の一家の物語。『あんたがたどこさ』や「戦争ごっこ」など当時の子どもや庶民の日常生活を描き、「なるべく暗くならないようにした」と滝澤さんは話す。45年3月10日の東京大空襲や5月29日の横浜大空襲、富岡空襲当日-。滝澤さんは「原稿を読み合わせるたびに泣いてしまった」。それでも、歌と踊りをふんだんに取り入れることで、「子どもたちが楽しく稽古しながら私たちと共に歴史を学べる場になれば」。滝澤さんは「富岡のトンネルには看板もなく、富岡空襲を知らない人も多いと思う」とし、「戦争は世界中で今も続いている。人が殺し合う、残酷なことを子どもに見せたくない、演じさせたくないという方もいるが、目をそむけず、戦争のことは伝えていかないといけないと思う」と語る。

 公演は金沢公会堂で9月7日(日)午後1時開演予定。現在幼児から大学生を対象にした出演者を募集している。7・8月の日曜日を中心に柳町ケアプラザで稽古を行い、富岡トンネルなどを訪れる歴史散策も予定。定員20人、参加費無料。希望者は6月28日(土)までに瀧澤さんへ申し込みを。(問)滝澤さん【電話】045・783・6484

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