意見広告・議会報告
街の「定点観測」という視点土地と人の記憶とともに 市会議員 こしいし かつ子
現在、本郷台駅周辺には、複合公共施設「さかえすた」、栄区民文化センター「リリス」、県立地球市民かながわプラザ「あーすぷらざ」、本郷台駅前メディカルモール(医療モール)、駅前広場などが整い、趣味・サークル活動、イベントや会議など、区内外の人々に活用され、栄区の日々の暮らしと文化の中心地となっています。
明治21年の大船駅開業以降の栄区は、農業と産業が共栄しました。第二次世界大戦時には現本郷台駅周辺に軍需工場が設置され、大きく様相を変えました。戦後は連合国軍による接収で広大な面積がPXや関連施設に占められました。昭和42年の接収解除以降、土地の多くは国有地となり官公庁の公共施設として利用が始まり、警察、消防、病院、市営住宅などが街の骨格となりました。
公有資産の民間活用時代へ
「さかえすた」は、旧国家公務員住宅跡地の開発に、民間整備にとどまらず区民利用を可能にする整備を目指した好例です。整然とした街並みの下には、戦後の接収や人々の営みといった“土地の記憶”が静かに横たわっています。
こうした歴史は、本郷台駅周辺に限らず、豊田地区、笠間地区、上郷地区など、どの地域にもそれぞれ存在します。笠間では高度成長期の交通量の増加による負荷が続き、笠間十字路の慢性的な渋滞が象徴的な課題でしたが、近年ようやく改善が見え始めました。
大船駅周辺では、利便性の高い国有地が長年活用されず、まちづくりが停滞してきたという現実があります。地域未来のため、その活用を諦めずに問い続けます。
どの地域にも共通するのは《戦争による喪失、接収による制限、その後の経済成長と恩恵》であり、そのすべての層(レイヤー)の上に、私たちの今の暮らしが築かれていることです。さらに遡れば、縄文時代の遺跡が発掘されるほどその営みは古く、町名「公田(くでん)」に現されるように、皇室に献上する良質米の産地だったとも聞きます。そうした悠久の歴史にも思いを馳せながら、私は今の街づくりに向き合っています。
私の原風景は「いたち川」と「原宿六ツ浦線」です。自然が育んだ川と、人の手で作られた道路。その2つは栄区の背骨として暮らしの中心にありました。私は昭和50年に小学校に入学しましたが、物心ついた昭和45年頃から、道路を挟む東西の山々で宅地開発が進み、緑が伐採され次々と生まれる住宅地を眺めていました。まさに街全体が躍動感に満ち、未来へ向かっているような時代でした。私が卒業した犬山(現上郷)小学校の児童数は3千人を超え、街の成長は常に子ども達の急増と共にありました。
私は本郷出身の父と豊田出身の母の元、上郷町に生まれ育ちました。いたち川の源流、瀬上沢にはかつて生家の田んぼがあり、まさに私の「うぶ湯」と呼びたくなる原点があります。また豊田小学校には、校長を務めた祖父の写真が今も残されています。
私はこの街・栄区で、「定点観測」をしながら、幾層にも重なる歴史、人々と土地の記憶を体の芯で感じて生きてきました。この”定点のまなざし”は、横浜市はじめ日本中の都市課題に対し、本質を見極め、未来のあり方を丁寧に描く力となり得ると確信します。
誰のために働くのか…5本指の教え
加えて、激動の昭和100年を横浜市会議員として生きた父・角田和宏からの教えも大切にしています。変化の激しい社会の中で、私にとっての不動の指針です。私は10歳、父が横浜市会議員に初当選したその夜に、父は私に自分の手を見せながらこう語りました。
「有権者が5万人いたとして、1万人が俺に投票してくれたとするだろう?」
そう言って、片手の親指をもう一方の手のひらで包みました。
「俺はその1万人の代表として働く。それは当り前のことだ。でもな、大事なのは、残りの、俺に投票しなかった4万人のこともどれだけ考えられるか、なんだよ」
そうして父は、別の4本の指を握りなおして続けました。「それが、公の仕事に就く者の覚悟ってもんだ」。この時の父の手、声、空気は、今でも私の胸に深く残っています。
「民主主義とは数の力なのか」私は「多数決」はあくまで手段に過ぎず、多数を得た者は少数に寄り添え、と考えます。それが父の「公僕としての姿勢」であり私の政治信条です。
また地域の代表を志した私には「自然や土地のありようは人智を超える。時には組織論や儲け主義等の人間社会の価値観から離れ、アンテナを研ぎ澄して、本質にゆだねる勇気を持て」とも諭しました。
昭和100年の今、激動の時代を経てさらに未来へ向かう我々社会のため、過去に学び、畏敬の念と覚悟、託された理想を抱きこの街と人々に向き合っていきたいと思います。
![]() 大船駅笠間口に連なるグランシップ
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![]() さかえすた建設前の旧国家公務員住宅工事現場を視察
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![]() 市内最古の石造り「昇竜橋」
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