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港南区・栄区 人物風土記

公開日:2025.07.17

自治体立優良病院総務大臣表彰を受けた県立精神医療センター所長を務める
小林 桜児(おうじ)さん
芹が谷在勤 54歳

患者と世間つなぐ翻訳者

 ○…地域医療の確保などにおいて役割を果たしている病院に贈られる大臣表彰を受賞した。評価された新たな専門外来の設立に関して「職員の数が足りている分、チャレンジしやすい病院だと思う」と要因を語る。社会構造が変化する中、今後の課題に「人材育成」を挙げ、「新しい心の病が出てくる可能性もある。その時のために知識や経験を職員同士で蓄えてたい」と将来を見据える。

 ○…新聞記者だった父親の影響で転居を繰り返した子ども時代。小学6年生からは米国で暮らし、海外生活の難しさを実感した。「初めのうちは授業についていけず、発音を同級生に笑われた」。孤独を感じる中で本を読むようになり、哲学に興味を持った。「哲学で『絶対的に正しいことはない』という考えに触れた。環境に馴染めない私を勇気づける主張だった」と語り、徐々に周囲との違いを受け入れられるようになった。

 ○…中学3年生まで米国で過ごし、その後は日本で大学の哲学科に進学。しかし3年生で将来の進路に悩んでいる時、精神病理学の本を読んだことをきっかけに精神科医を目指し始めた。「人の心を扱う精神病理学に哲学と近い部分を感じ、惹かれた」と当時の心境を明かす。そして、卒業後に1年間浪人し、公立大学の医学部に合格。29歳で卒業した苦労人だ。

 ○…精神科医としてのやりがいについて「私が『抱える問題を言語化できない患者』と『世間』をつなぐ翻訳者となり、共に社会復帰を目指せるのが魅力」と笑顔で話した。所長就任後、患者と直接関わる機会は減ったが、今度はセンターと地域をつなぐことに注力する。「センターの名前には地名が入っていないからこそ、地域の医療施設などとの関係を強化したい」と展望を語った。

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