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港南区・栄区 人物風土記

公開日:2025.10.23

第57回横浜詩人会賞を受賞した
氏家 篤子さん
港南台在住 75歳

抱く不安を詩に託す

 ○…今年の4月に初の詩集「あいまいな場所」を刊行。横浜詩人会賞に選ばれた。受賞の知らせを聞いた時のことを「数日前まで入院していたこともあり、選考に残っていたことも忘れていた」とおどける。今の心境を「5年前にも詩集を出そうと思ったが、夫との死別などが重なり、一度諦めた。今回は形にできて良かった」と笑顔を見せた。

 ○…今作の原風景となったのは鶴見区の工業地帯。30年ほど前、公共施設で勤務するなかで「曖昧な場所」という印象を抱いた。「工業地帯なのに海沿いに公園や森がある」「海と陸で分かれているが、埋め立て地なので元は海だったこと」などが感じられる要素とした。今作に収録されている『切通しの通学路』の中には「この切通しの通学路は 誰が通っても 入り口も出口もない 吹き抜け」という一節があり、平易な言葉を使いながら”曖昧さ”を表現している。

 ○…横浜に転居する22歳までを愛知県で過ごす。学生時代を「ちょうど安保闘争が盛んな頃で、世界が揺れていた。この頃から未来や世の中に対して不安感を抱くことがあった」と振り返る。また、「作品には若かりし頃の記憶が反映されている」と時代に与えられた影響を口にする。

 ○…執筆を継続するなか、共に詩を書く友人から「形にしないのはもったいない」と説得され、1年前から詩集の制作に取り掛かった。10年ほど前の作品も多く掲載されているが、「以前と今の感覚が違うことに気づいた」とし、半年間を加筆・修正に費やした。「完成はしたが物足りない。上手くなりたいし、もっと選びたい作品もあった」と悔しがりながら笑う。今後も飽くなき向上心のまま、自身の感情を詩に託し続ける。

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