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港南区・栄区 人物風土記

公開日:2025.11.13

横浜芝山漆器研究会会長で展示会を中区で開催した
赤堀 郁彦さん
栄区柏陽在住 89歳

漆芸の技術、後世に伝承

 ○…貝や珊瑚、翡翠などの素材を使用し、器物の表面に花鳥人物などの模様を嵌めこむ伝統工芸「横浜芝山漆器」の研究会で会長を務める。「横浜開港後に海外からの注文もあった貴重な技術を無くしてしまうのはもったいない」。10月に市技能文化会館(中区)で開催した展示会には、自身の作品に加え、貴重なコレクションも並んだ。「一般の人にも見てもらって良かった」と柔和な表情で微笑む。

 ○…東京芸大美術学部工芸科漆芸部を卒業。「当時は稼業で漆器を扱っていても継ぐ人が少なかった」。漆芸の道に進まず、自身も東映の美術部門に就職。「華やかな世界にあこがれた」。高倉健や美空ひばりが出演する映画のロケハンなどを担当した。太平洋海空戦を舞台にした映画『殴り込み艦隊』では「横須賀の自衛隊の船の色を当時の軍艦の色に塗り替えた」と誇らしげ。

 ○…激務だった当時の映画業界で体調を崩した後、着物などをデザインする会社へ。29歳の時、横浜市の職員に。輸出工芸指導所(後の市工業技術指導センター)でスカーフなどの地場産業の販路拡大などを担った。「この時に横浜芝山漆器に出会った」。作品作りも始め、数年後には日展に入選、1972年には第4回日展で特選を受賞。「市の職員で、比較的時間がとれたから」と制作にのめり込んだ。

 ○…研究会の会長に加え、栄区美術家協会会長を長く務め、区内の小学校などに美術作品を寄贈する情操教育にも力を入れてきた。現在は、日本の漆文化を広めることなどが目的の(一社)日本漆工協会の理事長も歴任。能登半島地震後には輪島の組合のために寄付を募った。「漆の文化を明日につなぎ、後進に託すことが私の使命」と力強く前を向く。

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