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公開日:2019.07.25

カンボジアコットンクラブの世話人 古澤敦さん
「虐殺、内戦で失われた人材を取り戻す」
地雷原にある紡績工房が”伝える”展示会

  • 防護衣を着てトークライブを行う古澤さん(桜木町のクラーク記念国際高校で)

 カンボジアの内戦激戦地だったバッタンバン州。今も地雷汚染が深刻な同地で、横浜出身で元NHKディレクターの古澤敦さん(50)は、2009年に「カンボジアコットンクラブ」を立ち上げ、紡績業を営みながら近隣農家の女性を雇用し、自立させる活動を行っている。古澤さんは7月28日(日)まで、アートギャラリーATHLE=中区石川町=でコットン製品の販売や現地の様子を写真で紹介する展示販売会を開催。また期間中は、神奈川と東京の高校など13校で自身の経験を伝えるトークライブも行っている。



 古澤さんの紡績工房で作られるコットン製品は、無農薬で栽培された綿花から作られている。日本発祥の紡績機「ガラ紡」で綿から糸を紡ぎ、染織も天然植物を利用。一切有害化学物質を使わないオーガニック製品を自身のWebサイトで販売している。同工房には、インターネット環境がなく、自ら7Kmケーブルを引っ張ってつなげたという。



 今回展示販売会は生まれ育った横浜に住むたくさんの仲間に「活動を伝えたい」という思いと、カンボジアへ出向いたことのあるギャラリーのオーナーとの縁で実現した。



働く×教育



 同工房で働くのは、教育を受けたことがなく字もかけない近隣農家の女性たちだ。古澤さんは「貧困地域で学校を建てても、教師を雇えず建物だけが残っている地域はたくさんある。働くことを通して教育することで、技術や英語を伝えていくことが大切だと思っている」と話す。現在は7人の女性たちと働いているが、今まで指導してきたなかで大手企業の目に留まり、ヘッドハンティングされた人も数多い。



池上さん追ってNHKへ



 「学校は好きじゃなかったし、高校も休みがちで退学届けも出しました」と振り返る古澤さん。周りが大学に進学するなか、1日中バイトに没頭する生活を何年か続けたあと、夜間大学へ。そこで出会ったのが、ジャーナリストの池上彰さんだ。当時、古澤さんは一人旅で世界中を回っており、池上さんが担当する作文指導の授業で、世界を歩いて思ったことや感じたことを綴った。そこで「人から褒められたことがない私が、初めて池上さんに文章を褒められたんですよ。『古澤くんにしか書けない文章だよね』って」



 池上さんとの出会いで「経験を伝えること」に興味を持ち、池上さんを追ってNHKに入社。同社では、アフガニスタンやカンボジアなど戦争・紛争地域へ足を運び取材活動を行いながら、ディレクターとしてドキュメンタリー番組を手掛けた。



全財産賭け



 戦争・紛争地域で生きる人たちを取材するなかで「惨状を世界に伝えること」と「今ここで伝えられること」のどちらが大切かを考えることに。「迷ったら厳しく見える方を選びなさい」と池上さんに背中を押され、バッタンバン州に渡った。



 虐殺、内戦で失われた人材を取り戻す――。何もなかった場所で全財産を紡績工房の機械購入やインフラ設備に捧げ、ゼロからスタート。経営状況がギリギリながらもコットン製品を生産しながら、彼女らと10年以上奮闘している。



好きな仕事を



 古澤さんは、日本に帰国している期間で東京・神奈川の高校など13校でトークライブを展開。7月16日は、クラーク記念国際高等学校=中区桜木町=の高校3年生46人に向けて講演した。



 当日は、バッタンバン州の原生林で地雷から身を守るために着用するヘルメットとブーツ、スーツで登壇。これからを生きる高校生に「人生の主人公は『自分』だ」と投げかけ「他人の同調圧力に屈せず、好きなことを仕事にして生きてほしい」と呼びかけた。授業を聞いた高校3年生の嶋村友佑さんは「人生において、挑戦する大切さを学んだ」と感想を話した。

 

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