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南区 人物風土記

公開日:2015.08.27

子どもたちの詩を書にする活動を続け、8月に作品展を行った
飯村 喜代子さん
井土ヶ谷下町在住 75歳

書に込める人々の魂

 ○…亡くなった子どもなどが残した言葉を書にする活動を始めたのは1999年から。無念の思いでこの世を去った人の気持ちを書にすることで「魂をよみがえらせたかった」という。自身は35年前、小学5年生だった長男を心不全で亡くした。8月22日まで開催した作品展では、長男が残した「人はちょっと見ただけで好き嫌いしてはだめだよ」という言葉の書も展示。「語りかけてくれた息子が私の書家としての活動の支えになっている」と語る。

 ○…都内で生まれ育ち、「勉強はできなかったけれど運動と絵を描くことが得意だった」と体育祭ではリレーの選手に、絵は優秀な作品として学校からよく表彰された。高校生のころに書道の作品を教諭に褒められた経験から、OL時代に書道を2年間習う。28歳で結婚後、2人の息子を授かると「子育てと一緒に生涯学習を始めたかった」と書道学会に入会。本格的に書家としての活動を始める。

 ○…「きれいな字は心が澄んでなければ書くことができない」という師の教えを胸に刻んで技能を高めた。55歳で独立後、殺人事件の被害者の悲しみがつづられた新聞連載を読み、色紙に言葉を書くように。2003年には、区から書道教室の講師を依頼され、10年以上にわたって障害者にその素晴らしさを伝えている。「『自分の胸の中にある気持ちを自由に書いて』と指導したら何枚も書いてくれた」と心から寄り添う。

 ○…夫と長女と井土ヶ谷下町で暮らす。長男が好きだったというコーヒーを販売しようと夫と一緒に専門講習を受け、30年前にコーヒー豆店「まめや」を開業。現在は六ツ川に店を構える。東日本大震災が発生した4年前には、店内に被災した子どもたちの詩を展示したこともあった。遠方から鑑賞に訪れた家族もおり、「書を通して新たな出会いが生まれた」と笑顔。「健康に気を付けて生涯現役でいられたら」と人々の魂を言葉に移し続ける。

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