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公開日:2020.06.11

一斉花火プロジェクト
總持寺、収束願い参加
2日で実現 業者も感謝

  • 總持寺三門越しに上がる花火

  • 僧侶が見つめる中、準備を進める花火職人

 「コロナよ、無くなれ」――そんな思いを込めた花火が、6月1日、鶴見の空を彩った。場所は大本山總持寺の駐車場。新型コロナウイルスの収束を願い、全国の花火業者が企画した一斉打ち上げプロジェクトに、總持寺が場所を提供し、ファイアート神奈川=厚木市=が打ち上げた。「少しでも社会を明るく、元気に」。関係者らの思いがにじんだ。

 「全国一斉悪疫退散祈願Cheer up!花火プロジェクト」と題した企画。約300年前、享保年間の大飢饉による死者の慰霊と、流行した疫病を防ぐための悪疫退散祈願が花火のルーツとされることもあり、「全国に希望と元気を」と、日本煙火協会の青年部が考案した。

 参加したのは全国163の花火業者。密となる状態を避けるため、6月1日午後8時という打ち上げ時間だけを公表し、場所は非公開で行われた。打ち上げ時間は5分以内という制限も設定。当日は、全国200カ所で打ちあがった。

「勝手連」が願いこめ

 横浜市内では、總持寺と若葉台公園=旭区=の2カ所のみだった。そのうちの一つである同寺が、ファイアート神奈川に依頼したのは2日ほど前という急展開だった。

 同寺では、プロジェクトを知った僧侶を中心に「勝手連」として参加・協賛を決断。伝手を頼りたどり着いたのが、プロジェクトに賛同していた同社だった。数日のうちに鶴見警察、消防署に申請。打ち上げが確定したのは前日だったという。

3月初めから自粛

 緊急事態宣言よりも前、3月初旬の段階から感染拡大防止のため、イベントや参禅会などを休止していた同寺。例年7月に行う恒例の盆踊り「み霊祭り」も中止に。大駐車場が会場となる祭りでは、毎回花火も上がっており、こうした実績も今回の早い展開につながった。

 同寺は、「新型コロナの早い収束を祈願するということ、感染症対策にあたられている医療従事者への感謝という趣旨が、参加を決めた理由です」と話す。

ファイアート神奈川”希望”の65発

 「誰もが、何も考えずに楽しんでもらえるもの」。当日の午後5時ごろ、時折雨脚が強まる中、ファイアート神奈川の代表取締役社長・和田順さんは、同僚と二人で準備を進めていた。

 同社では、今年予定していた花火大会など、10カ所以上がすべて中止となった。

 「我々は花火を打ち上げるしかない」。そんな中で立ち上がったプロジェクト。すぐに賛同し、打ち上げ場所を探したが、「宣言解除前で、不安がられてしまって、どこでも上げられない状況だった」と和田さんは明かす。

 結果として、地元の厚木市民の後押しもあり、会社近くで20発、社員のつながりから山梨県都留市でも打ち上げられたが、「總持寺さんのお話は本当に有難かった」と謝意を示す。

ひと時の楽しみに

 この日、同社が用意したのは、直径70mほどになる6cm玉を50発、直径100mの9cm玉を15発。尺玉など大きいものは、許可に時間がかかるため、届け出のみで出来る範囲とした。

 「自粛で商売は厳しく、医療従事者の方たちは今も最前線にいる。学校の部活も、スポーツもなくなった。空を見上げ少しでも楽しんでもらえたら」。そんな思いをこめた。

思いに感動

 午後8時、打ち上げ前に雨が強くなったものの、予定どおり打ちあがった。約4分間で計65発だった。

 現場では、僧侶や修行僧が、距離を取りながら並んだ。ちょうど通りすがった人たちが、スマートフォンで撮影する姿もあった。

 見上げた区民の一人は、「やっぱり花火はきれい。関わった皆さんの思いも含めて、感動した」と話した。

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