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「土木事業者・吉田寅松」【17】 鶴見の歴史よもやま話 鶴見出身・東洋のレセップス!? 文 鶴見歴史の会 齋藤美枝 ※文中敬称略

掲載号:2020年11月19日号

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吉田勘兵衛は材木商だった

 坊主店を紹介していた時、建功寺の現在のご住職枡野俊明師から電話をいただいた。枡野ご住職も子供のころ、「ぼうずのみせ」と呼んでいたという。

 それはさておき、「建功寺には江戸時代、安永三年(一七七四)に江戸八丁堀の吉田與左衛門という人物から寄贈された天蓋があります」という思いがけない情報がもたらされた。

 八丁堀は、材木問屋が軒を並べていた町。「建功寺に天蓋を寄進した吉田與左衛門は、材木商だったかもしれませんね」という枡野師のお話から、橘樹郡旭村北寺尾の農家の長子として生まれた吉田寅松は、子供のころから父、鶴田治兵衛と横浜に出て材木との商いをしていたということと、横浜の吉田新田一つ目沼地の埋立事業にあたった寅松は、蓬莱町に土蔵が三棟もある大きな材木店を構え、一つ目沼地の埋立てに要する木材を供給していたことを思い出した。

 鶴見は、浅野総一郎が大正二年から始めた潮田地先の遠浅の海岸を埋立て、大工業地帯を形成するころから、鶴見川河口は木材の一大集積地となり、木材業が盛んになったが、寅松が生まれ育った幕末のころから木材業が盛んであったという記録はない。枡野師の話から横浜の吉田新田を開発した吉田勘兵衛は、もとは江戸の材木商だったことを思い出した。

 吉田勘兵衛(幼名は良信)は、慶長十六年(一六一一)に摂津の国(現在の兵庫県)の室町時代に活躍した戦国大名波多野秀治の一族で、丹波の国(現在の京都府)数掛山城主だった波多野秀親の孫として生まれたが、数掛山城は明智光秀に攻められて落城。元和七年(一六二一)、勘兵衛が十一歳の時に両親が相次いで病死した。

 孤児になった勘兵衛は、従兄弟の能勢頼次の家臣の家に引き取られて育った。能勢頼次の母は鈴掛山城主の波多野與兵衛秀親の娘で、勘兵衛の父波多野秀治も秀親の息子だった。

 能勢氏は代々足利将軍家に仕え、豊臣秀吉にも仕えていたが、慶長四年(一五九九)、石田三成が徳川家康を襲撃するといううわさが流れた時、三成の屋敷の隣に住んでいた頼次は、その動向を探って家康に伝えた。関ケ原の戦いや大坂冬の陣で功を遂げ、江戸幕府の旗本として徳川家に仕えていた。

江戸城大奥近江局の後ろ盾

 江戸に出て商売をすることを志していた勘兵衛は、いとこである能勢の領主能勢頼次に従って江戸に出て、日本橋材木町で木材と石材の店を始めた。

 「火事と喧嘩は江戸の花」と呼ばれた江戸の町はたびたび大火に見舞われ、勘兵衛の店は繁盛した。さらに能勢頼次の娘で勘兵衛の従姉弟のお福が近江局(おうみのつぼね)として、徳川四代将軍家綱の時代に江戸城大奥を取り締まっていた。

 近江局は、二代将軍秀忠の乳母で、池上本願寺の五重塔を寄進した大姥局(おおうばのつぼね)の娘である岡部局の姪にあたることから、そのつてで夫の死後、江戸城の大奥に入り、将軍家綱の日光東照宮参詣にも同行するなど、高い地位を占めていた。

 勘兵衛は、近江局や老中の後ろ盾も得て幕府御用達となり、明暦の大火で焼失した江戸城の修復工事にもかかわった。

 さらに、墨田川沿いの湿地帯、現在の荒川区南千住付近を埋立て開発した新田での農業経営にもその才覚を発揮した。
 

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