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鶴見区版 公開:2021年11月25日 エリアトップへ

「土木事業者・吉田寅松」32 鶴見の歴史よもやま話 鶴見出身・東洋のレセップス!? 文 鶴見歴史の会 齋藤美枝 ※文中敬称略

公開:2021年11月25日

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土木請負業界の宿老

 日本各地で鉄道建設がすすめられるなか、明治五年に日本で最初に開業した新橋・横浜間の鉄道敷設工事で、高島嘉右衛門の配下で井上勝の指導を受けて培った技術と資金力もある鹿島組の鹿島岩蔵と吉田組の吉田寅松は土木請負業界の宿老と称され、日本各地の鉄道工事を請け負っていた。

「鹿島組」

 奥州線(現在の東北本線)の鉄道敷設工事で、鹿島組が盛岡事務所を設置した場所の隣に、のちに株式会社鹿島組の初代社長となった鹿島精一(旧姓葛西)が住んでいた。精一は旧盛岡藩士の家に生まれたが父を早く亡くし、母の生家の岩淵家に引き取られていた。

 これが縁で、精一は鹿島岩蔵の知遇を受け、旧制中学を卒業したあと、東京帝国大学土木工学科を卒業し、岩蔵の長女と結婚、婿養子となり、岩蔵没後、鹿島組三代目組長に就任。昭和五年に株式会社鹿島組と改組し、初代社長に就任。土木事業の経営を近代的な方針に変革して鉄道建設事業に一本化した。昭和八年に貫通した東海道線熱海・三島間の丹那トンネル工事で、鹿島組が請け負った脆弱な地盤の難工事を、岩蔵から受け継いだ技術と、新たに発案した工法で竣工させ、「鉄道の鹿島」を冠された。精一は、「世界の鹿島」の基礎を築くだけでなく、土木建築業全体の近代化に貢献した。

「吉田組」

 吉田寅松の吉田組は、長浜・敦賀間、長浜・関ケ原間、関ケ原・名古屋・武豊及び豊橋間、軽井沢・直江津間横川・軽井沢間の第二工区、奥羽線青森・碇ヶ関間の内の複数工区、奥羽北線鷹ノ巣・秋田間の複数工区、奥羽南線の福島・山形間第三工区と山形・大滝間第四工区、篠ノ井線篠ノ井・塩尻間第三工区スイッチバック線、日本鉄道会社の水戸・小山間に敷設された初代水戸鉄道、奥州線(現在の東北本線)の盛岡・尻内(現八戸)間、文挟・日光間、上野から土浦に至る土浦線(現在のJR常磐線土浦以南)複数工区、北海道炭鉱鉄道の追分・夕張間、磐城線(現在のJR常磐線)、大阪鉄道(現在の関西鉄道)の港町・王寺間、関西鉄道の草津・三雲間、関・柘植間、亀山・一身田間、四日市・桑名間、揖斐川橋台並びに架橋・木曽川間、上野・奈良間、木津・四条畷間、加茂・奈良間、三池炭鉱会社の大牟田線、筑豊炭田から産出する石炭を輸送する筑豊線の直方・飯塚間、九州鉄道の小倉・行橋間、大牟田・熊本間や長崎線の複数工区、宇土・三角間など、日本各地に張りめぐらされていく鉄道工事を請け負った。

 明治二十七年から二十八年にかけて請け負った関西鉄道の揖斐川鉄橋の橋台と架橋工事は困難を極めたが、工期内に完成させたとして明治二十八年八月に鉄道会社から千円、さらに十月には鉄橋架設錬成の証として千二百円の賞金を贈与された。

 鉄道工事だけでなく、佐世保港埋築工事では国家的な大事業を成し遂げ、吉田組の吉田寅松の名を不動のものとした。

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