アナゴ漁で大家族を養っている 谷 正則さん 子安通在住 51歳
子安浜のビッグダディ
○…入江川河口は子安浜と呼ばれる江戸時代から続く漁師町だ。一昔前はシャコ漁で賑わっていたが、現在はアナゴがメーン。江戸前の中でも、子安産は格別。「身に脂がのっているので、値が張っても買いたい」と市場価値は高い。暖かくなる今が旬。週2回、息子2人と長さ90cmの仕掛け「アナゴ筒」を630本も引き上げる。「最近は、1回で約130kgの水揚げ量だ」と豪快に答えるが、大震災前は450kgを記録したこともある。「去年はまったく獲れなかった。やっと持ち直してきたな」
○…漁師の5代目。幼少期から家業を手伝っていたが、昭和40年代、東京湾の埋め立てにより公害問題が発生。子安の漁師たちは、保証金と引き換えに漁業権を放棄した。これにより、生業としていた底引き網漁ができなくなってしまった。実質、漁師になる夢が断たれた瞬間だ。「目標がなくなり、学生時代は喧嘩に明け暮れた」。高校卒業後、港で働くことになった。
○…多くの漁師たちは丘に仕事を求めたが、刺し網漁で再起を図る仲間も現れた。時はバブル時代。「魚がびっくりする高値で取引されている。このチャンスを逃す手はない」。300万円の中古船を買い、25歳で漁師になった。現在は3千万円の船で縦横無尽に東京湾を駆け巡る。「誰でもやれる仕事じゃない。漁師町に生まれて良かったよ」。バブル崩壊後、本格的にアナゴ漁を始めた。乱獲を防ごうと、15年前に「あなご協議会」を設立し、安定した価格を維持している。
○…子ども8人を授かった。「漁師は家族の支え、特に嫁さんの理解がなければ成り立たない」と感謝を忘れず、年に2回は家族旅行に出かける。5人の息子には「1本の筒を貯金箱だと思え」と檄を飛ばし、これまで培ってきた経験を伝える。「自然が相手だから簡単じゃないが、継いでくれたらうれしい」。近い将来、兄弟船を見送るのが夫婦の夢となった。
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