青葉区 人物風土記
公開日:2025.12.18
今年50周年を迎えた平川神社囃子保存会の会長を務める
金子 惠一さん
美しが丘在住 77歳
灯りと囃子、次の世代へ
○…境内に響く陽気な笛・太鼓。皆を笑顔にするひょっとこ踊り。50年前、「神社に再び灯りと囃子を」の思いを胸に、仲間と平川神社囃子保存会を立ち上げた。先代の倉本澄夫さんから会長を引き継ぎ約2年半。「そろそろ、若い世代に引き継いでいかないとね」
○…生まれも育ちも美しが丘。当時、「港北区元石川町」と呼ばれていた街は、見渡す限りの田園風景。山内小学校まで、子どもの足には少し遠い道のりを級友と通った。高校卒業後、サラリーマンを10年ほど経験。勤め先の工場が茨城に移転し、それを機に実家の農業を継いだ。「長男だから、茨城に出るわけにもいかないしね。移転がなければ、ここにいなかったかも」と巡り合わせに思いを馳せる。
○…平川囃子の復活へ動き出したのは、20代半ばのこと。「高度経済成長のただ中で、みんな最新技術に夢中。祭りの勢いも下火になって寂しい感じだった」。半纏に練習場、新しい屋台や神輿まで、仲間と共に創り上げてきた。同じ頃、近隣の囃子や神輿も復活。祭りは徐々ににぎわいを取り戻した。山あり谷ありの50年間。技を磨き、今では子や孫とそろって祭りを盛り上げている。「毎年、変わらず続けられるのは幸せなこと」
○…月日は流れ、当時の先輩や仲間の多くがこの世を去った。「あの人たちには頭が上がらないね」と、写真に向かって一礼。今では、保存会結成当時を知る人は自分1人だ。「昔、囃子屋台は牛が引いてたんだよ。知らないだろ?」と楽しげに思い返す。目下の課題は、後継者の育成。「塾に部活に、子どもも忙しい時代。長期に続けられる環境がなかなかね」と思案顔。仲間や先輩と守ってきた平川の郷土芸能を、次の世代へ。感謝を胸に力を尽くす。
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