政府が発表した春の褒章で、東日本旅客鉄道(JR東)大宮総合車両センター=埼玉県=で電車車両の溶接工として働く田中聖一さん(57・区内在住)が黄綬褒章を受章した。
田中さんは、モーターやブレーキなどの重要な機器が集中する「電車の心臓部」ともいえる台車の修繕や車両の改造工事に携わる。これまでにボイラー溶接士の全国大会入賞や、埼玉県の溶接技術競技会で4度にわたる県知事賞の獲得、難易度の高い蒸気機関車(SL)の修復に携わるなど多くの功績を残し、2014年度には厚生労働省から「現代の名工」に選出されている。
歌舞伎役者の中村吉之丞を父に持ち、幼少期は役者としての教育を受けていた。父の出番時には電車に乗って劇場に足を運んでいたことがきっかけとなり、幼い頃から「将来は電車の運転士に」という夢を抱いていたという。
中学卒業後、旧国鉄鉄道学園に入学。実習で初めて溶接を体験し、「最初はわずかな範囲しかできませんでしたが、アドバイスを受けて自分なりに上手くできたことから興味を持つようになりました」と振り返る。
父同様「生涯現役」
仕事をする上で最も大切にしていることは「確実な溶接」の徹底だ。一歩間違えれば車両故障や事故を引き起こしかねない作業だからこそ大きな責任を感じるが、「溶接はものづくりの要。図面指示で鋼板を切断し曲げ加工をして、溶接で製品として組み上げることや、車両の新造で車体を造り上げた時に達成感が込み上げます」と笑顔で語る。
溶接工としてのキャリアに、褒章という輝かしい経歴が加わった田中さん。「技術や技能の向上に終わりはありません。まだまだ勉強して吸収していきたい。最終的な目標は、役者の父と同じ『生涯現役』ですね」。いぶし銀の技に磨きをかけ、乗客の安全を陰ながら支えていく。
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