神奈川宿の名物とされた「亀の甲せんべい」にまつわる歴史を、神奈川図書館職員の篠崎順一さんが20年ぶりに再編し、2冊の書物にまとめた。
東海道の神奈川宿に伝わる浦島太郎伝説にちなんだ亀の甲せんべいは、旅土産などとして江戸時代から大名や庶民に親しまれてきた。しかし歴史を継いでせんべいを販売してきた和菓子店が2005年に廃業し、300年近い歴史が途絶えた。
同図書館は、東海道宿駅伝馬制度の制定から400年となる2001年に『亀の甲せんべい資料集 東海道神奈川宿名物』を刊行。文献などの情報を整理した歴史編と、亀の甲せんべいが登場する文学作品の文章をまとめた資料編で構成された書物の編集・発行を手掛けたのが、篠崎さんだった。
当時の記録もとに
篠崎さんは刊行の3年後に異動となり、定年退職した19年から再任用職員として同館で勤務。15年ぶりに戻ってきた図書館の倉庫で、当時の記録ノートを発見したという。ノートには、亀の甲せんべいの創業家である若菜屋の関係者4人への聞き取り調査で判明した店舗の様子や製法、関東大震災時や戦後の動向などが記されていたことから、これらを『若菜屋調査資料集 神奈川宿名物亀の甲せんべい元祖』として新たにまとめた。
資料編にあたる部分は、神奈川区史などの史料を洗い直すことから始めた。黒船とともに来日した牧師が食したとされる記録や、江戸時代には若菜屋以外にも現在の普門寺や大綱金刀比羅神社の位置にせんべいを扱う店があったことなど、新たな事実や図版を盛り込んで『資料でたどる亀の甲せんべい 東海道神奈川宿名物の二百年』として改訂した。
約2年をかけて2冊をまとめた篠崎さんは、「2001年の刊行物を含めて3つ全てを読んでもらうことで、より理解してもらえると思う。忘れられつつある亀の甲せんべいを再認識してもらえたら」と話している。
3冊は市内各区の公立図書館で閲覧と貸し出しを行っている。問い合わせは神奈川図書館【電話】045・434・4339。
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