宿河原や堰周辺に多くある地蔵の前掛けを製作、約10年にわたって毎年付け替えてきた人がいる。堰在住で仕立屋「テーラータナカ」を営む田中壽雄さん(85)だ。
田中さんは約12年前に大病を患った。その後、リハビリを兼ねて宿河原や堰周辺を歩くようになった。続けるうちに、地蔵が複数あることに気が付く。地蔵に自身の健康を願う日々。その甲斐もあってか、次第に体の調子は回復していったという。「感謝の気持ちも込め、何かできないものか」と考えた。そこで思い付いたのが、地蔵の前掛け作りだった。
田中さんは徳島県生まれ。上京後、19歳からオーダーメイドの紳士服作り一筋の人生だ。「自分の培ってきた技術を生かそう」と前掛け製作を決意。布地をハート型に切り抜き、真ん中に「心」と文字を入れた。
毎年12月28日に付け替え
製作しているのは約60枚。毎年12月28日に歩いて付け替えてきたという。「19歳の時に仕事で成功できるようにと、末広がりの八が付く8月28日から仕事を始めた。だから、縁起のよい年末の『28日』に付け替えるようにしている」とほほ笑む。今年は健康上の理由もあり、歩いて付け替えに行くのは一部だけの予定。前掛けは地域の人に預けて「できることならば、1年に1回付け替えて」と頼んであるそうだ。
85歳となった今も仕事は現役で続けている。「お地蔵さんのおかげだよ」と田中さん。宿河原に長年住み、親交のある伊東久子さん(73)は「平穏に暮らせているのは、お地蔵さんを大切にしてくれているからかもしれませんね」と感謝の言葉を口にした。
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