2025年の幕開けにあたり、本紙は福田紀彦川崎市長に恒例の新春インタビューを行った。川崎市制100年の節目を迎えた昨年を振り返るとともに、若い世代を交えたまちづくりの必要性や、全国・世界をリードするグローバルな都市実現への意欲を示した。(聞き手/本紙川崎支社長・有賀友彦)
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――昨年は市制100周年と全国都市緑化かわさきフェアを開催し、節目の年でした。市長が呼び掛けてきた「知って、関わって、好きになってもらう」、公約に掲げる「緑化先進市」という点で、手応えや課題はありましたか。
「年間を通し様々な記念イベントを行い、6月の飛躍祭は約18万人、10月の多摩川花火大会は20万人超、緑化フェアも94万人もの人にご来場いただき、多くの市民の皆さんと100周年を共有し、改めて川崎を知って関わっていただいた機会になりました。実は100周年の認知度と、愛着・誇りを表すシビックプライド指標は比例しており、そういう意味で川崎を好きになっている人が確実に増えていると認識しています。緑化フェアの前半は天候もあってか出足が鈍かったのですが、後半は佳子内親王殿下がお見えになられたこともあり、急速に認知度が上がりました。緑化フェアは昨秋と今春の開催で、計160万人の来場者を目指しており上々の滑り出しです。春ならではの花や緑もあり、春会期では秋にも増して楽しんでいただけると思います。一方で課題は、緑化フェアのレガシーを次の時代にどうつないでいくか。公園や街路樹などの日常の緑、都市の中の緑の価値や可能性をいかしていけるよう、101年目の今年からまちづくりの挑戦が始まります」
「若い世代も地域参加を」
――市のイメージアップにつながりましたか。
「各イベントを通じて、川崎が持つ魅力を最大限発揮できたと思います。本市は基本的に川崎市民へのPRを重視しており、他都市とは少し異なる方針ですが、その準備してきたものを良い形で表現できました。飛躍祭ではブルーインパルスに市周辺を飛行していただいたことで、結果的に市外にも100周年を周知できました。また『みんなの川崎祭』は6車線の道路を初めて封鎖し楽しむことで、道路空間を活用したにぎわい創出の可能性を示すことができました。今後、公共空間をいかした取り組みを進める上で良いモデルになったと思っています」
――能登半島地震から1年、阪神・淡路大震災から30年。昨年は被災地支援を積極的に進めましたが、得た学びや教訓、市の防災力強化にいかせる点はありましたか。
「地震が発生した元日から3カ月間は集中的に職員を現地へ派遣し、延べ約3500人が輪島市などの被災地で支援活動にあたりました。今も災害廃棄物の受け入れや技術職員を派遣しており、中長期にわたるかもしれませんが一刻も早い復興復旧のために尽くします。今回得た教訓は、災害時のトイレ問題です。特に川崎市のような都市部は、被災直後から衛生的にも重要な課題となると認識していますので、マンホールトイレの整備など、総合的なトイレ対策について早急に検討を進めているところです」
――市民の防災意識を一層高める上での課題はありますか。
「例えば風水害と地震では備え・対策が異なること、各家庭でのマイタイムライン(避難行動計画)作成の必要性、都市型災害の危険性など、市民に理解を深めていただくため強く訴えていきます。また消防団員を増やすことも地域の防災意識向上につながります。消防団業務は大変という印象を持たれがちですが、団によっては年間数時間の活動でよいなど実際には過度な負担なく活動できるので、若い世代にも加入してほしいですね。発災時に命を守り、復興復旧においても日頃からの地域のつながりが不可欠です。都市部はそうした連携が希薄な傾向にあるからこそ強く働きかけていく必要があります」
――防災や防犯、子育てや地域包括ケアなどの観点からも、町内会・自治会の重要性は増しています。しかし一方で、住民世帯の加入率は2019年度の60%から23年度は56%と減少の一途をたどっています。現状をどう捉え、どのような見通しを立てていますか。
「地域のあらゆる場面で大切なのは顔が見える関係です。例えば子育てでも公園で遊ばせたり、通学する際にも地域の目がある安心感は大きいです。地域全体で子どもを見守り育てることで、子育てが楽しいと思える環境や人間関係も生まれるはずです。その点でも、若い世代が町内会・自治会に加入し、地域でつながりを持ち、まちづくりにも加わっていただきたい。コロナ禍が明け、地域活動やイベントが再開し、その楽しさを体験・体感できるようになった今がチャンスです。市内では多世代との交流機会を増やすため、大型公園を会場に、防災や地域について楽しく学べる企画を実施している事例もあります。市も『町内会・自治会活動応援補助金』などで支援を続けながら、加入するメリットや魅力も伝えていきます」
――東芝や富士通の本社移転、ホリプロやDeNAの事業展開など、川崎市がますます大手企業に選ばれる都市になっていると感じます。その要因と、今後の市政運営にどうつなげますか。
「これまでに数多くの立地企業の皆さんと一緒にまちづくりを進めてきた成果が表れてきています。狭いエリアながら、企業を集結させ、新たな研究開発や技術が生まれる都市へと注力してきた本市の取り組みと、各企業の方針が合致してきているように感じます。日本でこれほどグローバルな企業が揃っているエリアはないように思います。研究開発を先導しイノベーションを生み出す都市に向け、顔ぶれが揃ってきました。量子コンピュータの設置を契機に取り組みを進めている『量子イノベーションパーク』も新川崎を中心拠点にしつつ、川崎臨海部もエリアと捉え取り組んでおり、先端企業の集積という川崎の強みをいかし、新たな産業が生まれることを強く期待しています。また、これまで京浜工業地帯の一角を担い二酸化炭素を排出しながら成長を遂げてきた本市が、JFEの跡地利用をはじめ、カーボンニュートラルによって豊かになろうという100年に一度レベルの産業構造の大転換を急速に進めています。我が国の経済を引っ張っていくという機運が市内全域で高まっていますし、市も一緒に取り組んでまいります」【1月10日号へ続く】
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