中原区 人物風土記
公開日:2025.08.29
施設や里親の養育で育った経験を語り、里親制度推進に協力する
池田 累さん
南足柄市在住 34歳
川崎の里親が人生を変えた
○…7歳のころ、母が自分と兄、そして再婚相手の男性を残して家を出た。9歳の時に神奈川県内の児童養護施設へ入所。14歳から18歳まで川崎市内の里親のもとで育った。現在は3児の父となり、不動産業を営む傍ら、里親制度を推進するこども家庭庁などの依頼を受け、「語り部」として自身の経験を語る。
○…幼い頃から野球に夢中になり、1998年の横浜高校の「春夏連覇」に刺激を受け「野球選手になる」と決意。施設から通う中学の野球部で力をつけると、野球に打ち込める環境を求めて中学3年で川崎市内の里親家庭へ。市大会3位の成績を収め、10校以上の高校から推薦の誘いを受けたが、「養育」を受ける立場では選択肢が限られていた。すべて断り、地元の公立である市立橘高校へ進学を決めた。
○…1番目の里親は「1年間」の条件だったため、高校進学直前に2番目の里親家庭へ。明るい女性看護師と無口な自動車整備士の里親夫婦は、野球に打ち込むことを歓迎してくれた。野球三昧の日々で「ろくに言葉を交わさなかった」というが、「2人が毎日仕事に出かけ、暮らしを回す姿を見ていたことは大きかった」と振り返る。
○…18歳で自立すると、何でも相談できる「人生の先輩」として里親の存在感が増した。交際相手との結婚を考え始めた20代半ばには、家庭を持つイメージが湧かず、「先輩」にあれこれ尋ねた。「母は『この女性なら間違いない』、父は『嫁の言うとおりにしとけ』と。そうか、この2人のように暮らせばいいのかと思えた」。結婚式では泣きじゃくりながら、2人に「ありがとう」を連呼した。「確実に自分の人生を変えてくれた。里親のおかげで、『この生き方で大丈夫なんだ』と思えている」
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