中原区 人物風土記
公開日:2025.09.26
10月4日に向河原駅前通りで花魁道中を行う「チーム歌留多」の座長を務める
中野 亜美さん
下沼部在住 30歳
文化で人を楽しませたい
○…アニメや海外ドラマの声優、ダンスの振付師、役者などさまざまな肩書を持つ。ほがらかな笑顔が、華やかな着物と化粧で一変する。りりしい立ち姿に、美しい着物が周囲を魅了。「気持ちも引き締まり、最高位の遊女である花魁になるんです」。一座の舞台で磨いてきたその姿を、日中の商店街で初めて人前に見せる。かつらだけで3kgもある重い衣装をまとい、向河原駅前通りを1時間かけて練り歩く。
○…出身は長崎県。幼いころから歌と踊りが大好きな子だった。18歳で上京し、音楽や映像制作会社でダンスの指導者の道を目指した。コロナ禍は2カ月間、まったく仕事がなく、そんなときに先輩に連れられて見に行った歌舞伎が人生を変えた。「日本の文化を知らないことに気が付いて」。着物文化や着付けを学び、太鼓、三味線を習い始めた。そして、仲間4人で和装エンターテインメント一座「チーム歌留多」を立ち上げた。
○…いつも誰かが遊びに来ているにぎやかな家庭に育った。両親は誰からも好かれ、人を招いては手料理を振舞った。「人を楽しませることが好きなのも、二人の影響が大きいのかも」。そんな両親を早くに亡くす。「人生で一番悲しい出来事を乗り越えた。これからは両親への感謝を胸に楽しく生きていくだけ」
○…お酒と食べることに目がなく、性格は「がさつで、大ざっぱ」と笑う。細かいことは気にしないが、きれいな字と裁縫の腕前は褒められる。人一倍涙もろい点は、親しい仲間には周知の事実だ。ダンスの教え子のステージ後は、いつも感極まって涙ぐむ。多くの人が関わり、一緒に作り上げてきた今回の花魁道中の舞台。「終わったら泣いてしまいそう」。そうつぶやいた大きな瞳の奥が、きらりと光った。
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