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川崎区・幸区 人物風土記

公開日:2012.09.21

日本のほか、世界11カ国で「天真正伝香取神道流」を教える
杉野至寛(ゆきひろ)さん
幸区中幸町在住 74歳

父の遺志継ぐ求道者



 ○…剣術、居合術、槍術、棒術、薙刀術…。いわゆる武芸十八般を網羅する「天真正伝香取神道流(以下、香取神道流)」は、室町時代に始まった武道として知られる。「これからは柔道だけでなく、古武道も勉強しなくては」――。「柔道の父」嘉納治五郎氏からの命を受けた先代の杉野嘉男氏は、香取神道流を修業の末に体得。自身の柔道場「唯心館 杉野道場」で指南を始めた。嘉男氏の四男として生まれ、幼少時から門下生を教える父の姿を見続けてきた。見よう見まねで香取神道流をはじめると、父の弟子たちと戯れながら技を学び、気づけばその奥深さに魅了されていた。



 ○…関東学院大学に進学し、卒業後は富士電機の関連会社でサラリーマン生活を送ったが、毎週の稽古を欠かすことはなかったという。「稽古は嫌いじゃなかったですね。やればやるほど面白いんです」。兄弟の中で最も稽古熱心だったこともあり、98年には父を継いで2代目館長に就任。門下生への指導の傍ら、靖国神社の春の例大祭で演武披露も行っている。また、先代から続けてきた海外での指導にも熱心だ。フランスやイタリア、アメリカ等、世界11カ国にある杉野道場の海外支部に、年6回のペースで訪問を続けている。



 ○…黒澤明監督の『七人の侍』や『柳生武芸帳』、『隠し砦の三悪人』等の剣術指導を行っていた父を「あの黒澤監督とけんかするほど、剣術シーンには強いこだわりを持っていた。大きい人だった」と今も尊敬している。自身も手伝いとしてよく撮影現場に足を運んだといい、名優・三船敏郎に誘われて酒を飲んだこともあるのだとか。



 ○…道場創立85周年を迎えるにあたっても特別なことは考えておらず「今まで通り、香取神道流を発展させていきたい」とぶれない。一方で「90周年、100周年もやりたいね」とも。世界中に1000人以上の門下生を抱える師範はまだまだ元気だ。

 

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