川崎で日本人形を作り、指導する 澤井 澄子さん 渡田東町在住 82歳
人形作りに捧げて60年
○…日本髪を結い、着物を纏った日本人形。木芯やパッキン、針金を使い、脱脂綿で膨らみを出して体を作り、一針ひと針手縫いをした着物を着せる。完成するまでは、生活の合間に作業をして1週間ほど。そのほか、木目込み人形や創作人形も得意分野だ。東海道かわさき宿交流館には「街道風景」と題した創作人形が22体、開館当初から展示されている。23年前に、協会の会員仲間4人で浮世絵の写真集などを参考にしながら、すべて手作りで制作した。
○…三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)での会社員時代、行員仲間で開かれた人形教室に誘われたことがきっかけで人形作りを始めた。仕事の後食堂に集まっては、夢中で創作に励んだ。当時は高度経済成長前で「人形作りなんて贅沢なこと、という時代だった」。ある日、出来上がった人形を持って帰り、恐る恐る母に見せたところ、予想とは逆の反応だった。『何て優雅なこと。やりたいことなら続けなさい』。この一言を励みに、60年近くを人形作りと共に歩んできた。
○…00年にフラワーアレンジメントの指導者である妹の長谷川紫穂(しすい)さんとともに行った「二人展」は心に強く刻まれている。源氏物語をテーマに、書をしたためる紫式部の人形を作り、傍らには妹が布などで作った花をあしらった共同作品。「また2人で作りたいわ」と、意欲を見せる。全国に5万人以上の会員を有する日本芸術人形協会の教授として現在、川崎日航ホテル内と渡田老人いこいの家で「寿美人形教室」を開き、指導にもあたっている。
○…創作人形は「昔の人は、こんな表情をしていたかな、このお人形にはお団子を持たせようかな、などと想像しながら1体を作り上げていく過程が楽しい」と、魅力を語る。今後は、平安時代から伝わる遊び「貝合わせ」をテーマに創作に取り組みたいと話す。「お人形は私の人生の拠り所よ」と、ほほ笑んだ。
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4月19日
4月12日