今にも泳ぎ出しそうな生きの良さを感じさせる「魚拓」の展示会が今月16日から20日までJR川崎駅前のアートガーデンかわさきで開かれた。
作品の主は幸区南加瀬在住の北堀忠作さん(91)。イシダイ、タチウオ、カワハギ、イカ、タコ、1mアナゴ、エイなど40点が会場を訪れた約200人の目を楽しませた。2年に1度のペースで開催し、今回が10回目。北堀さんの魚拓は墨の濃淡や、ヒレの細かさなどにもこだわる。「魚拓は奥が深いよ。あらかじめスケッチをしておいて背びれの骨の数まで忠実に再現するんだ。いかに実物に近づけるかが大事。見る人を楽しませるものにしたい」と語る。北堀さんにとって魚拓は釣りの記録であると同時にアート作品でもある。他の人が釣った魚で頼まれることもあり、「人に喜んでもらえるのは嬉しいこと」と無償で引き受けたことも多々ある。約60年前から魚拓をとりはじめて独学で筆の使い方などを習得し、これまでに約200枚を作成。完成までに2〜3週間かかるといい、「目の入れ方ひとつで魚が生きたり死んだりする。人に見せられるのは40〜50枚かな」と。自慢の一品はイシダイや他ではあまりみないタコ、イカだとか。
釣る楽しみから釣らせる楽しみに
千葉市出身の北堀さんの釣りの原点は10歳位の時に父親に連れられて行った佐原市の利根川でのフナ釣りや、東京湾でのアオギス釣り。数々の釣果の中で印象に残るのは1964年に伊豆河津菖蒲沢で釣った、全長1・25m、14・5kgのネコザメ。川崎市釣連合会に「カワハギ釣り」「シロギス釣り」の名人に認定され、スポーツ紙釣り大会の審査員を務めたこともある。川崎市交通局の職員だったころは役所の釣りの会会長も務め約200人の会員のために、月に1回計画を立て、船釣りに出かけたりした。現役時代に市教育委員会主催の釣り教室、引退後も2年前まで麻生区で24年間釣り教室の講師を務めた。釣り場は日本国内にとどまらず、韓国、中国、サイパン、グアム、ハワイ、オーストラリア、タイ、スペイン(地中海)、インドにまで出かけた。「インドに行ったときには仕掛けをすっかり家に忘れてきてしまい、ガンジス川をただ見学してきた」と笑う。
釣りとは「楽しむこと」という北堀さんだが、戦後、1946年から48年ごろの食糧難の時は、多摩川沿いの大田区武蔵新田に住んでいて、ガス橋付近で「食べるため」にボラやハゼを釣ったこともあった。
現在は年齢的なこともあり、船釣りや磯釣りなどは控え、自宅近くの鶴見川でハゼ釣りなどを嗜む。また週に1度、東扇島や鶴見区の釣りポイントに出向き、釣れていない人に仕掛けなどについてアドバイスをして「釣らせてあげる」ことが楽しみだという。
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