川崎区・幸区 社会
公開日:2021.08.13
戦没者慰霊塔に父思う
幸区遺族会会長 富永さん
夢見ヶ崎動物公園の東端に、高さ17メートルの川崎市戦没者慰霊塔がそびえ立つ。明治以降の戦争戦没者、戦災者の冥福を祈るために1960年7月に建てられ、8167柱が祀られている。
塔周辺の清掃は川崎市内各区の遺族会が持ち回りで月に1回行っている。
幸区遺族会の富永正敏会長(83)は「普段は亡くなった人を思うことはあまりないが、掃除のときはやはり思い出す」と話した。富永さんは4歳の頃、両親の実家があった茨城県久慈郡天下野村(けがのむら)(現常陸太田市)に疎開。終戦間近に父親が旧満州(現中国東北部)で戦死した。同じ村から一緒に出征した人が知らせに来たが、祖父は「亡きがらを見ないと信じられない。帰ってくる、帰ってくる」と言っていたという。富永さんが最後に父親に会ったのは小学生になる前に、水戸連隊に面会に行った時だった。まだ幼かったこともあり、父親の死についてはあまり実感はなかったという。同じ村にいながら事情から母親は自分の実家で暮らし、富永さんと妹は父方の祖父母に育てられた。村は空襲などの直接被害は受けなかったが、父親の戦死や母との別居など、「戦争は子どもに大きなとばっちりを食わせるものだ」と不条理さを語った。
減り続ける会員数
幸区遺族会は清掃を3月、9月に担当。毎回約10人が参加しているが、高齢者が多く徐々に活動も厳しくなってきているという。現在会員数は約100人。最近は毎年10人近く減ってきている。亡くなる人もいるが、やめてしまう人もいるという。富永さんは「戦争を忘れないためにも遺族会は必要なものだが、新しく加入する人はいない」と頭を悩ませる。
8月15日(日)には各区遺族会から2名ずつ参加で、塔の前で戦没者・戦災者追悼式が行われる。
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