補給廠17ha(ヘクタール)返還 相模原の新時代 道拓く 市の表玄関、整備具体化へ
早期の道路利用急ぐ
米軍相模総合補給廠(約214ha)の17haが国に返還された。米軍施設の大規模返還は1981年の米陸軍医療センター(現・伊勢丹周辺など)以来。9月30日に加山俊夫市長が南関東防衛局から報告を受けた(=写真)。市は2027年の実現をめざす小田急多摩線延伸と橋本駅付近のリニア新幹線神奈川新駅を併せ一体的なまちづくり「さがみはら新都心」形成に努める。市民利用として、加山市長は道路整備を優先する方針も示した。市の都市計画上、歴史的な前進となった。
返還された土地は相模原駅北側に位置する約15haと、道路・鉄道用地約2ha。15haの区域は、11月に行われる「潤水都市さがみはらフェスタ」の会場の土地にほぼ該当する。
返還をめぐっては、2008年6月の日米合同委員会で返還が合意されたのを受け、10年から補給廠内の米軍住宅の移設など条件工事を国が開始。今年8月に完了したことから、9月18日からの同委員会で手続きが進められ、同30日に米軍が返還を了承した。今後は、現在所管する防衛省が土壌調査を行った上で財務省に移管。市と財務省との払い下げ交渉を経て市の所有となる。防衛省の調査は約2年を要する見通しだ。
ただ、道路用地について市は早急に取り組む方針を示しており、「暫定的に整備し国に働きかけながら早期に実現したい」と意欲を見せる。道路用地の横幅は26mで、完成すれば片側2車線の市道が町田街道と相模原駅との間で結ばれる。迂回できるよう、向陽小東交差点に抜ける東西道路の計画も検討しているが、「1車線道路でも、できれば早く進めたい」と前向きだ。
「さがみはら新都心」加速
今回の返還は、相模原駅周辺の整備面でも大転換になる。市はすでに本年6月に基本計画を策定。返還地の跡地利用として、市の行政の中枢拠点、公的機関の集積のほか、国際会議を行えるコンベンションセンターやアート交流施設、宿泊、商業施設を挙げている。返還地と隣り合う約35haの共同使用区域では首都圏の防災拠点としての利用も検討されている。この基本計画を軸に、有識者らによる検討委員会が15年度まで具体化に向けた整備計画の策定を進める。市は、小田急多摩線の延伸、橋本駅付近のリニア中央新幹線神奈川新駅の設置、さがみ縦貫道を併せ、27年までに相模原、橋本駅周辺を一体とする広域交流拠点整備を加速させたい考え。将来的には、両駅の特性を生かした複眼都市を特色とする「さがみはら新都心」の実現を図る。
あくまで「全面返還を」
一部返還の実現はまちづくり全体の視点では大きなな前進だが、最大の目標は全面返還だ。市は「まちづくりに必要なものから先に取組んでもらった」と返還を受け止めつつも、「今後は共同使用の野積場52haの返還も求めていく」とし、早期の全面返還を見据えて、恒久的な基地使用には反意を唱え、一歩も引かない考えを強調した。長きにわたり、補給廠がある日常を過ごしてきた宮下自治会の入谷利郎会長は「何十年も動いてきて、皆やっとという感じがある」と感慨深げに振り返るとともに、市には「これからも返還の要望をし続けていくことが大事だ」と述べ、全面返還に向けて毅然とした対応を求めた。
関係者など市民の反応
補給廠一部返還に際し、関係者が感想を寄せた。
相模原駅周辺商店街連合会・浦上裕史会長…一歩前進したと言えるが、早々に次の手を打たなければいけない。返還後の跡地利用が重要です。簡易的な建物でも、人気サーカス団や劇団の公演、フリーマーケット開催など、市外から人を呼び込む企画を行うべき。
相模原西商店街協同組合・中里和男理事長…政令市・相模原の表玄関としての役割が果たせる。橋本、相模大野の開発が進む中、そこにはない街づくりをしたい。特に国際コンベンション施設の建設が実現した際には、ニーズに合った店づくりに努めていきたい。
宮下自治会・入谷利郎会長…地域の活性化と利便性が良くなることは良い。これまでも宮下1・2・3丁目あたりが抜け道(町田街道から16号へ抜ける)になっていて住民から「何とかならないか」の声もあった。市に16号への幹線道路整備の早期化を要望する。
小田急多摩線延伸促進協議会・成川猛会長…返還は市民の皆様と関係各位の努力の賜物だと思います。小田急線においては、田名までの延伸で通学通勤での活用はもちろん、豊かな自然や地盤の強さを求めて市外から多くの人々が来て、住んで頂けるよう尽力したい。
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