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さがみはら中央区 トップニュース社会

公開日:2025.12.11

民生委員一斉改選
成り手不足が深刻
市内欠員100人超

  • 高齢者宅で聞き取りをする小川さん

 地域の高齢者や子どもの見守りなどを行う「民生委員」の3年に1度の改選が行われ、相模原では12月1日、計827人が委嘱された。世帯数や独居高齢者の増加でニーズが高まる一方、委嘱数は年々減少しており、今回は欠員109人。充足率は9割を下回り、成り手不足が深刻だ。民生委員が不足することによる地域への影響と、今後求められる対策を探った。

 民生委員は正式には「民生委員・児童委員」と言い、担当地区の高齢者や子どもの状況把握と支援を行う。厚生労働大臣から委嘱を受けた「特別職の地方公務員」という立場で、交通費などの活動費は定額で支給されるが、ボランティアのため給与はない。

地域の見守り機能が低下

 相模女子大学の准教授で地域福祉などを研究している横地厚氏は現状について、「『支援を必要とする人の増加』と『支援の担い手の減少』が同時に進行している深刻な問題。この『逆相関関係』は地域社会のセイフティネットがほころびつつある状況を意味している」と言う。

 「民生委員は高齢者の異変などの情報を関係機関に伝えるパイプ役。民生委員が減少することで独居高齢者の孤立や、孤独死などの重大事態への対応が遅れるリスクが高まる。また、欠員が出た地域では他の民生委員への過重負担につながる」

 担い手不足の背景としては、制度への理解の不足や業務負担の増大などを挙げる。特に業務負担については、「高齢者、障害者、ひとり親世帯、児童、生活困窮者など、活動対象が極めて多様化している。制度上、業務範囲が明確に定義されておらず、個人の判断に大きく依存する結果、心理的・身体的負担が増大している」と話す。

 また、高齢者の就労率増加や、現役世代が仕事・介護・育児など複合的責任を抱えていることも人材不足につながっているという。

欠員最多は上溝

 今回の改選で、中央区内では上溝地区の欠員が最多だった。同地区の民生委員役員によると、民生委員を中心になって集めるのは自治会長のため、自治会自体の加入率低下や高齢化が課題となっている中、必然的に成り手も減少しているという。

 民生委員は活動実態があまり知られていないことが課題の一つ。10月16日、中央区内の民生委員、小川紀江さんの活動に同行した。

高齢者を戸別訪問

 小川さんはこの日、市からの依頼で年に1度行う「ひとり暮らし高齢者等戸別訪問」を行った。担当している地区内の一人暮らしの高齢者106人の中から、特に状況が気になる人を10人前後抽出し、訪問するという。

 この日は2件の家を回り、「買い物や家事で困っていることはあるか」「続けて歩くことができるか」「もの忘れに関して心配事はあるか」といった質問を通して日々の生活状況を聞き取り、緊急連絡先も確認した。介護レベルや地域内で仲の良い人をメモする場面もあった。

 民生委員の活動には戸別訪問のほか、高齢者等との日頃からのコミュニケーションや月に1回の定例会への参加、定例会で協力を求められた活動への参加がある。活動頻度は人によるが、小川さんの場合は準備・交渉作業を含めて月に8日前後稼働しいるという。

 民生委員の意義を問うと、「自分で自分の状態に気付いていない高齢者もいる。『民生委員』という肩書きがあることで話しやすくなったり、アドバイスに聞く耳を持ってもらえたりする。絶対に絶やしちゃいけない」と答える。

担い手減への対応策は

 小川さんは「民生委員に対する依頼はたくさんあるので、『行かなきゃ』となると辛いかも。でも、私は無理なときは無理と言うのでそんなに縛られている気はしない。『忙しくても民生委員はできるよ』と伝えたい。また、それぞれの活動が本当に必要なのか、本当に民生委員がやらなきゃいけないのかは議論の余地がある」と話す。

 上溝の役員は「これと言って対応策がない」とこぼしつつ、「自治会に民生委員の活動をしっかり理解してもらうことが求められる。市全体の課題なので市も役割や必要性をPRしなきゃいけない」と話した。

 横地准教授は、現役世代の参加を可能にする環境づくりとして会議のオンライン開催や夜間開催などを挙げる。また、神戸市では大学生が民生委員の活動を体験するインターンシップを導入した先行事例があるという。「地域における新しい形の支え合いの意識とシステムを構築することが重要」と語った。

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