昨年「イグ・ノーベル賞」を受賞した北里大学教授 馬渕清資(きよし)さん 陽光台在住 63歳
科学に溢れるユーモアを
〇…バナナの皮はすべる――。誰もが信じて疑わないような定説を「本当にそうだろうか?」と真正面から向き合った。専門は医療工学。研究を続けてきたヒトの関節の粘液が、その果物の粘りに重なった。実際に何本ものバナナを消費し摩擦係数を調べ滑りやすさを数値で実証。世界的に権威あるノーベル賞のパロディ的な位置付けで、科学にユーモアを取り入れた功績を称える「イグ・ノーベル賞」を受賞した。
〇…受賞の知らせから国際スピーチという大舞台を1カ月後に控え、その内容に思案を広げた。考えた末、賞の性質上「エンターテイメントに徹する」と決めた。そして繰り広げた1分間スピーチ。開口一番、「ヘイ!エブリバディ!」と叫んで歌うパフォーマンスは、国内外の注目の的に。「あの1分間で人生が直角に変わった。周りは当惑しているようですが」。テレビ出演や雑誌取材が殺到、一教授は時の人となった。
〇…「イライラしてしょうがないんです」。ボタンを押しても一向に変わらない信号、いつ来るか分からないまま待ち続けるバス停。住まいのある陽光台から北里大の職場までの通勤でさえ、非合理的な事象への疑問が生じる。そして次々に湧くアイデア。「もっとこうすれば効率的なのにとね」。勤めて間もなく始めた趣味のテニス歴は20年以上。「ラケットの振り方、特にバックハンドはテニス肘に繋がりやすい。これも立派な研究対象ですよ」
〇…どこか大人になり損ねてしまったと自らを分析する。幼いころ興味があったのは生物の分野。しかし将来を見据え東京工業大学へ進学。のち、北里大学で人工関節の研究を続けながら医療と工学の授業を受け持つ。「純粋に疑問を持ち新たな発見をする喜び」を教壇から伝えている。連日の取材も「質問されると疑問がうまれます。もうこうしている間にもね」。またユニークな発見で驚かせてもらえる日も近そうだ。
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